水4フランス文学概論

開講しました!

今日は、初回のルーティン(授業概要、成績評価の方法などの説明)を終えたのち、文学史の方法と題して、ひとつの具体例をとりあげました。ボードレールの『パリの憂鬱』のなかの「駄目なガラス屋」が、エドガー・ポーの『天邪鬼』のポジティブな影響と、ア…

最終回(筆記試験実施)

今日は、予定通り、筆記試験を実施しました。前期に比べて受講者の数は少なかったのですが、その分、少数精鋭となったようです。答案をざっと拝見したところ、ちゃんとテクストを読み込み、自分自身の問題意識に基づいてテーマを設定しているもの(私の期待…

今日は、まず、現代詩人ジャック・レダの『パリの廃墟』から「ブーランヴィリエ通りの古い駅舎に」で始まる「散歩詩」(レダのパリ散歩シリーズを仮にこう呼んでおきます)を読み、続いて、この詩で描かれた散歩コースを確認のために辿っている訳者の堀江敏…

お久しぶりです。今日は、これまで様々な機会にしゃべったことのある「クレオール文芸入門」の話をさせていただきました。この話は、一度聴けば済むというものではありませんし、また、私の関心の力点も、その後微妙にずれてきたりしていますので、その点、…

今日は、まず、レーモン・クノーの詩集『運命の一瞬』所収の「詩法のために」から第3節の有名な部分「置き場所がよく 選び方もよければ/いくつかの言葉で詩ができる/一篇の詩を書くためには/言葉を愛してやればいいのさ」(安藤元雄訳)を読み、続いて、…

今日は、前回に引き続き、イヴ・ボヌフォワの詩と詩論を読みました。『現前とイマージュ』ではボヌフォワの求めるものが様々な表現の形で繰り返し語られますが、その中のひとつ、「幼い読者」が語に出会うと同時に存在と大地の全体にも出会う、という言い方…

今日は現代フランスを代表する詩人イヴ・ボヌフォワの詩論の一部を紹介しました。まず、1981年12月4日のコレージュ・ド・フランス開講講義『現前とイマージュ』の一節をゆっくりと読み、ヴァレリーの形式主義的探求とは対立するボヌフォワの実存的詩学の一端…

今日も引き続きモディアノです。日本語で読める優れた「モディアノへの誘い」というかモディアノ論として、堀江敏幸さんの文章「濃密な淡彩――パトリック・モディアノ論のための覚え書き」(『書かれる手』、平凡社、2000年、所収)を少し紹介したあと、先週…

今日は先週に引き続き、パトリック・モディアノのテクストを読みました。まず『暗いブティック通り』の第24章のおさらいをしてから、続く第25章をゆっくりと読みました。訳書p.175からp.176の部分に顕著なように、通り(Rue/Boulevard/Avenue)の名前は、効…

今日は、パトリック・モディアノの『暗いブティック通り』(1978年)から、第24章と第25章を取り上げ、地図を参照しながら、主人公の「過去探し」に付き合ってみました。第24章を読んでいるうちに時間が来てしまいましたので、第25章については、来週、読む…

今日はル・クレジオの初期の短編集『発熱』(1965)から、表題作の「発熱」と二番目の短編「ボーモンが痛みを知った日」の一部を紹介してみました。「発熱」の主人公ロックが、熱病にうなされて経験する「奇妙な旅」の部分は、細かく味わってみるに値すると…

今日は、まず、先週紹介したデュラスの『モデラート・カンタービレ』の中から「西日」の描写をいくつか抜き出して、解説してみました。話を交わす二人の影が壁に繋がって映り、それが黒い穴のようになった、という部分は特に不吉な感じがよく出ていましたね…

今日は、マルグリット・デュラスの『モデラート・カンタービレ』(1958年)を紹介しました。短いですが、密度の濃い象徴主義的小説という印象を持ちます。細部の表現に、実に見事と思われる部分がたくさんあります。たとえば、カフェでショーヴァンと話をし…

今日はミラン・クンデラの『冗談』(1967)と『不滅』(1990)の一部を紹介しました。『冗談』からは、クンデラの反抒情主義がもたらす強烈な「抒情」について、愛と性の不一致が生むアイロニーの場面を例に挙げて、説明しようと試みましたが、まだ十分では…

開講しました

あっという間に「夏休み」が終わり、新学期に突入です。前期は20世紀前半の作品をいくつか読みましたが、後期は20世紀後半の作品をいくつか読んでいく予定です。前期と同様、授業は、具体的なテクストを紹介して、ひたすら私が話をするというスタイルで行く…

最終回(筆記試験)

今日は筆記試験を行いました。「20世紀前半のフランス文学の作品(ひとつないし複数)について、関心のあるテーマを設定し、1600字程度(多少の増減は許容)で自由に論じなさい。資料等の持込は不可とする」という設問。つまりは小論文の試験でした。…

先週に続いてサン=テグジュペリです。今日は『星の王子さま』から第24章を三人の訳者の日本語訳(内藤訳、野崎訳、石井訳)を参照しながら、フランス語原文の味わいなども説明しつつ、ゆっくり読んでみました。じっくり読んでみると、いろいろなことに気…

今日はサン=テグジュペリの小説『夜間飛行』の一部と、自伝的・エッセイ的小説『人間の大地』第7章「砂漠のただなかで」の一部を読んでみました。後者では特に、砂に穴を掘って、そこに身を横たえ、砂でからだを覆い、顔だけ外に出しながら「静かな夢想」に…

今日はセリーヌ『夜の果ての旅』の続きです。「郊外」がどのように表象されているか、いくつか具体例を挙げて、先週に続いて大雑把なパリ郊外の地図(特に北西部のセーヌ河が大きくカーヴしているあたり)を参照しながら読んでみました。ランシイという地名…

今日はルイ=フェルディナン・セリーヌの長編小説『夜の果ての旅』(生田耕作訳・中公文庫上下二巻)の前半部分から、傷病兵を収容するイッシー・レ・ムーリノーの病院の描写、エロット夫人の店の紹介部分、とりわけ、金持ちが集中するパリの「上等の一切れ…

今日は『ナジャ』のつづきです。1926年10月6日の夜、ドーフィーヌ広場の散歩の場面を、地図を参考にしながら、ゆっくりとたどってみました。過去現在未来を、そして、地上と地下を見とおすvoyanteとしてのナジャの不思議なホラーの世界。visionの眩暈を仕切…

今週と来週はアンドレ・ブルトンの『ナジャ』を読みます。今日は、まず、第一部のはじめのところ、「私の生活」の定義をいろいろな言い方で述べている部分をやや詳しく紹介したあと、第一部のおわりのところ、ルイ・アラゴンが指差したホテルの看板の「赤いR…

今日はアポリネールの詩「地帯Zone」(1913年の詩集『アルコール』の巻頭を飾る長い詩)を読みました。鮮烈なイメージ、飛行感覚、スピード感、力動感(ディナミスム)、叙情性、その振幅の大きな世界はかなり魅力的です。「今、ここ」の現実に他の多くの時…

今日はジッドの実験的前衛小説あるいはアンチ・ロマンあるいは「失敗した傑作」、『贋金つくり』を紹介しました。官能的・耽美的な『シェリ』を読んだあとだと、特に、ちょっと何コレ?という感じの作品ですが、これといった筋とか中心的テーマとかはない小…

今日はコレットの『シェリ』(1920年)を読みました。感覚に訴える繊細な表現が見事です。特に、素晴らしい飲み物や美味しそうな食べ物が描かれた場面、息を大きく吸い込む場面が、全編にわたって散りばめられた薔薇色のトーンと合わせて、とても官能的でし…

今日は前回に続いて、プルーストの『失われた時を求めて』から「スワンの恋」をめぐって、二つの書物の考察を紹介しました。ひとつは、吉川一義先生の『プルースト「スワンの恋」を読む』(白水社、2004年)から「カトレアする」の場面の解説。大通りのレス…

先週少しだけ紹介したヴァレリーの1919年の「精神の危機」の第一の手紙の後半、松浦さんの文章で紹介されたところなど、ポイントを絞って復習してみました。特に、レオナルドの発明した鳥人間(=飛行機)が平和目的(山の頂に雪を取りに行って、それを真夏…

開講しました

第一回の今日は、授業概要、成績評価の方法などを説明したのち、「ベル・エポック(美しい時代)」をキーワードに、松浦寿輝さんの見事な論文「ヴァレリーとベル・エポック」(『ユリイカ』1992年12月号所収)を参考にしながら、ヴァレリーの1919年のテクス…