2019-04-01から1ヶ月間の記事一覧

「内面の書物」のなかで作者・読者・書物は溶け合う

今日は『文学の第三共和政』第2部の前半部プルースト論の第9節を解説しました。プルーストの書物論では「作者、読者、そして書物は、それぞれの同一性を失い、互いに廃棄し合って、あの我々ひとりひとりの《内面の書物》、そのレクチュールがエクリチュール…

効果理論派から遠く離れて、コローおじさんは平和!

今日も「コローをめぐって」の続きです。p.1332の真ん中まで、読みました。ヴァレリーによるコローの肖像が、対照法(コントラスト)によって、浮き彫りにされていきます。コローと対極的な位置に置かれているのが、ドラクロワ(音楽家ならばワグナー、詩人…

中庸の倫理から希望的文献目録へ

今日も前回の続きで、研究とは何なのだろう、という基本問題を意識しながら、外材批評と内在批評、コンテクスト重視の研究とテクスト重視の研究という、テクストを扱ううえでの両極端の視点が、ジャルティさんによれば、今や、そうした二項対立は積極的に乗…

内面のヴィジョンを読んで書く―プルーストの美学

今日は第8節の続きを読み、説明しました。「読書について」と「サント=ブーヴに反論する」という二つのテクストから、ヴィジョンの美学について引用される文はいずれもプルーストの魅力的な創作論、天才論を示すものになっています。文は人なり、というのは…

氷の荒野にオジグ登場

今日はp.21の一番下まで、読みました。冒頭からおよそ一頁半にわたって半過去一色。半過去の基準点より以前に生起した事象を記す大過去も含めて、ひたすら描写につぐ描写でした。写真の並列、あるいは、動画的な各種ショットの連続的な提示により、荒涼とし…

どのように書かれているのか、ヴァレリーの文章芸をしっかり見る

今日はヴァレリーのコロー論「コローをめぐって」の読みの続きで、テクストp.1331の真ん中下の行空きのところまで、読みました。息の長い文が「3」(要素をかならず3つ挙げる)のリズムで展開されていること、一か所リズムが少し乱れているところ(avancer…

火2『理論の魔―文学と常識―』を読みながら文学研究について考える

パリのノートルダム大聖堂が火事――というニュースにショックを受けつつ、淡々と第二回目の話をしました。今日は、前回読んだ内在的方法と外在的方法の諸相について、私自身の経験をもとに、話を展開してみました。「美しい」読書体験は基本として共有しなが…

木2フランス文学各論I&特論I

開講しました。アントワーヌ・コンパニョン著『文学の第三共和政』を律儀に読み、解説する授業です。今期が4期目となります。学期初めの今日は、新たな受講者の方々のために、この本の目次を眺めながら、これまでの経緯を概説しました。そのあと、さっそく第…

水4フランス文学基礎講読I

開講しました。初級文法を終えたばかりの方々がフランス文学の原文を読むために必要となるステップとして、ときどき、文法のやや詳しい説明や練習問題のプリントを配ることにしています。今日も、大過去について、詳しい説明と練習問題を経由してから、シュ…

水2フランス文学研究演習I

開講しました。大学院の授業です。前年度に引き続き、ヴァレリーの芸術論テクストを読みます。今回は1931年1月の講演をもとにした1932年発表の文章「コローをめぐって」(1934年刊行の『芸術論集』第2版所収)を読んでいきます。初回の今日は、ヴァレリーと…

火2フランス文学特論Ⅲ

開講しました。大学院生向けの授業です。アントワーヌ・コンパニョン著『文学をめぐる理論と常識』を読みながら、文学研究論文における問題設定のあり方について考えていきます。今日は、序章から「理論、批評、歴史」という一節を読み、内在批評と外在批評…