今週と来週はアンドレ・ブルトンの『ナジャ』を読みます。今日は、まず、第一部のはじめのところ、「私の生活」の定義をいろいろな言い方で述べている部分をやや詳しく紹介したあと、第一部のおわりのところ、ルイ・アラゴンが指差したホテルの看板の「赤いROUGE」という文字が或る別の角度から見ると「警察POLICE」と読めたこと、そして二時間後に、あるお宅で眺めただまし絵のようなパネル(虎が角度を変えると壺に見えたり天使に見えたりする)を見た経験が重なった上に、数年後、アラゴンスターリン主義への傾倒とスターリン(虎)の血の粛清という出来事が重なった、という、複数の事実の避けがたい「接近」のエピソード、そして、労働批判の部分に、「怠惰の権利」というよりは、「積極的な彷徨、待機の状態を生きようとする「自由」のモラル」を読む巌谷氏の註の言葉を紹介しました。というわけで、今日は『ナジャ』の本題に入る枕の部分の紹介だけとなりました。来週はナジャとの不可思議なパリ散歩からその一部を読んでみましょう(そこでもいろいろな要素が想像界で多重的に錯綜します)。『ナジャ』は文句なしに面白いテクストです。興味を感じた方は、この際、是非、読んでみてはいかが?