2011-01-01から1年間の記事一覧

今日は、コレットの代表作『シェリ』(1920年)を読んでみました。「薔薇色」がたくさん出てきました。美味しそうな食べ物や飲み物もふんだんに出てきました。豪奢な甘い生活のなかで、確実に過ぎていく時間の感覚、老いの予感というよりはリアルな実感……そ…

今日は、「フランス語圏クレオール文芸の問題性」というテーマに基づいて、クレオール研究の意義や重要なテクストを少し紹介してから、フランス植民地時代のマルチニック島の生活風景を描いた映画「マルチニックの少年」(ユーザン・パルシー監督、1983年)…

今日は、第18課「ヴァンパイア・マニア」の本文・練習問題を、すべて片づけました。映画「トワイライト」の人気の背景をめぐる記事でした。荒唐無稽で特殊な設定であっても、描かれる主題は「愛」とか「友情」とか普遍的なものであることが共感の基本になっ…

今日は、ポール・ヴァレリーの詩「海辺の墓地」についてお話しました。「海辺の墓地」については、東北大学出版会から出ている人文社会科学講演シリーズV「生と死への問い」に拙文を寄せました。今日の話も多くはそれに基づいています。難解とされる詩篇も、…

今日は、セレレット=ピエトリ論文のp.23の節の切れ目のところまで、読みました。夜になって肉体と離れざるをえないナルシスの魂の嘆き、肉体と本性を共有する(ルクレティウス)がゆえにそれとの別離は耐えがたい魂の苦悩。肉体の復活を激しく望む魂という…

今日は第17課を終えました。中学高校の教師パトリックの切実な体験談でした。数年前のフランス映画「パリ20区、僕たちのクラス」の世界が思い出されます。彼と同じような経験は、多かれ少なかれ、どこの国の先生方も経験することかもしれませんが、パリ郊外…

今日は、「友情の森」をめぐるホワイティングさんの注釈を丁寧に追ってみました。ヴァレリーにおける友情のテーマはかなり重要で、ジッドやフルマンとの手紙がたくさん引用されていました。たとえば、p.90で引用されている1891年11月のジッド宛てのヴァレリ…

今日は、まず、先週実施した中間試験の答案を返却し、少し読みにくく、したがって、訳しにくかったであろう実力問題について、ひととおり解説しました。つづいて、テキスト第16課に入り、本文・練習問題とも、すべて終えました。プロヴァンス地方でのクリス…

今日は、プルーストの『失われた時を求めて』から、プチット・マドレーヌ体験のシーンと、スワンが夜のグラン・ブールヴァールをオデット求めてさまようシーンを読んでみました。物語がドラマチックに展開するところも面白いのですが、息の長い、くねくねと…

今日も、セレレット=ピエトリ論文の読みの続きです。p.21の真ん中、節の終わりまで読みました。細部の濃密な分析が凝縮したかたちで言及され、全体の論の道筋を見失いそうですが、なんとか持ちこたえて、読み進めています。1920年の事件で混乱した〈自我〉…

今日は、予定通り、中間試験を実施しました。第一問(20点)は教科書からの出題です。和訳は全体的によくできていますが、動詞の名詞化を問う問題の出来がよくありませんでした。動詞と名詞の両方のかたちを覚えることで、理解力・表現力の幅がぐんと広がり…

今日は、「友情の森」を読みました。動詞全体が過去形(複合過去と半過去)で語られる回想的詩篇です。「手と手をつないで」は、身体的現実ととるよりも、「並んで」の比喩ととるほうがいいかもしれません。並んで寝転がって星空を見上げるシーンがいいです…

今日は、第15課「ヨーロッパにおけるイスラム」の本文・練習問題をすべて、終えました。いつもよりも長めの本文でしたが、ちゃんと予習をしてきている皆さんのおかげで、つつがなく読み終えることができました。さて、来週は予定通り中間試験を実施します。…

今日は、「皇帝」のホワイティングさんによる解説を読みました。「力」なき「知」はない、という若い頃のヴァレリーのテーゼは、『レオナルド・ダ・ヴィンチ方法序説』のほか、たとえば、未刊の草稿「ボナパルト論」(短いメモのようなもの)にも展開が見ら…

今日は、マラルメの初期の詩篇を三つ(「陽春」「鐘つく人」「青空」)読みました。いずれもテーマは共通で、理想の詩を追い求めているが、なかなか理想の詩が書けないので嘆いている詩人の自虐的な詩です。意味内容はネガティヴなのですが、こうして詩の形…

今日は、私の担当の最終回、「ヴァレリーとドガ」のテーマでお話させていただきました。1917年9月のドガの死に際して、ヴァレリーは「カイエ」に、ドガとの交流で印象深かった点をいくつかメモしていますが、そこでメモされていたことがらはすべて、1936年の…

今日は、セレレット=ピエトリ論文のつづき、p.18の下から7行目まで、読みました。「1920年の事件」(カトリーヌ・ポッジとの恋愛事件)が「ナルシス断章」の制作の過程でいかに大きな出来事であったか、その事件の痕跡がいかに深く刻み込まれているか、こま…

今日は、第14課「モナリザ盗難事件」の本文・練習問題を、すべて終えました。1911年に起きたこの事件、二年間、ルーヴルにはモナリザがなかったことになります。犯人が見つかり、無事、モナリザが戻ってハッピーエンドとなりますが、絵が消えた当初には、詩…

今日は、『旧詩帖』の1926年版に初めて発表されたソネット「皇帝」のテクストをひととおり読みました。ホワイティングさんは、1893年3月22日付のジッド宛ての手紙の文言との共通点を根拠に、若い頃の作品であることは間違いないとしていますが、本当にそうな…

今日は、ゾラの『居酒屋』をめぐって、宮下志朗先生の論文を参照しながら、ゾラの文学の絵画性(文章規範としての絵画)と、液体の隠喩の効果などを、確認してみました。こうして、ゾラのテクストを注意深く眺めてみると、至るところ、光と影のコントラスト…

今日は、担当の第二回、「ヴァレリーと絵画のトポス」というテーマで、お話させていただきました。モンペリエのファーブル美術館、パリのリスボン街34番地にあったアンリ・ルアール邸の話、そして結婚後死ぬまで暮らしたヴィルジュスト街40番地のベルト・モ…

今日は、セレレット=ピエトリ論文のつづき、p.16の一番下まで、読みました。こういう、情報の詰まった濃密な文章を読むのは、かなり疲れますが、しかし、資料やロジックの確認などをしながら寄り添って読むと、そのディスクールの形と意味が理解できると思…

今日は、第13課「美の島、コルシカ」の本文・練習問題をすべて終えました。前半では、FNLC(コルシカ民族解放戦線)のテロ活動の話が紹介され、それとバランスをとるように、後半では、コルシカの美しい自然とおいしい料理の話が紹介されていました。テロの…

今日は、La Belle au bois dormant(1891年)のテクストをひととおり確認してから、Whitingの注釈を読みました。この詩が、Blancなどに典型的な「1890年の美学」(非現実・薄味淡麗志向)と、La Fileuseに典型的な感覚主義的リアリズムのちょうど半ばに位置…

今日は、ランボーの『地獄の季節』から「錯乱II−言葉の錬金術−」の章を読んでみました。散文と韻文が交互に置かれた、自作アンソロジー紹介のような文章ですが、そこには、「新しい詩学」を求めつつ、自我の変革を遂げようとする話者の実存的な試みも感じ取…

11月2日、9日、16日の三回分は、「フランス文学と美術」というテーマで私がお話させていただきます。初回の今日は、文学者と芸術家の交流のひとつの例として、ポール・ヴァレリーとレオナルド・ダ・ヴィンチの深い関わりについて、資料を参照しつつ、解説し…

今日は、セレレット=ピエトリ論文のつづきで、p.15の真ん中下Fragileの前まで読みました。意識の話や鏡像の話は難しいですが、おそらく、このあたり、「カイエ」の記述を頼りに、一歩一歩、手探りしながら論が進んでいるという印象を受けます。続く節(ナル…

今日は、第12課「ホームレスとの連帯」の本文・練習問題を、すべて終えました。用いられている構文はいずれもシンプルなものがほとんどで、特に難しい部分はなかったと思います。文中、二つのボランティア団体の名前が出てきましたので、ネットで検索し、そ…

今日は「眠りの森で」(1891年版の題名は「眠りの森の美女」)をひととおり読んでみました。ひたすら眠る姫の描写が、眠りを妨害して目覚めを誘発する可能性のあるものたちを列挙しながら行われています。第三&第四詩節でtes/taが出てきますが、これは…

今日は、フローベールの『ボヴァリー夫人』から「農事共進会」のシーンを読みました。二つの言葉(政治演説の言葉と恋愛の口説き言葉)の重なりの面白みと、紋切り型への強烈な批判が伝わってくる、きわめて意識的なテクストであることを理解していただけた…