今日はアポリネールの詩「地帯Zone」(1913年の詩集『アルコール』の巻頭を飾る長い詩)を読みました。鮮烈なイメージ、飛行感覚、スピード感、力動感(ディナミスム)、叙情性、その振幅の大きな世界はかなり魅力的です。「今、ここ」の現実に他の多くの時間と他の多くの空間が重なるうえに、自我が君と私に二重化して、奇妙に、幻想的に、リアルな感覚を与えてくれるように思います。実験的な前衛性があるとしても、それが、つまらない空疎さに落ちません。それは、このテクストの全体が、アポリネールの「生」に裏打ちされた豊かな叙情性によって確実に支えられているからだと思います。彼はサービス精神の旺盛な人です。堀口大學のまろやかな日本語もいいです。でも、フランス語が読める人には、やはり原文のリズムをじっくり味わっていただきたいものです。さて、来週から二回あるいは三回はブルトンを中心として授業をします。まず『シュルレアリスム宣言』などを見ますが、中心的テクストとしては『ナジャ』を読みます。これは「課題テクスト」としますので、皆さん、読んでおいてください。いろいろと感想を尋ねますので、特に面白いとお感じになったところや、疑問に思われたところなど、自由に話していただければ幸いです。ブルトンのあとは、セリーヌの『夜の果ての旅』(余裕のある方は是非よろしく)を、そのあとは、サン=テグジュペリの『星の王子様』(これも「課題テクスト」としますので、誰の訳でもかまいませんから読んでおいてください)を読む予定です。それでは、また来週。