先週に続いてサン=テグジュペリです。今日は『星の王子さま』から第24章を三人の訳者の日本語訳(内藤訳、野崎訳、石井訳)を参照しながら、フランス語原文の味わいなども説明しつつ、ゆっくり読んでみました。じっくり読んでみると、いろいろなことに気づきますね。省略符号が多いなあ、とか、原文はシンプルだなあ、とか。解釈の余地を広く残した象徴主義的小説、というように定義したところで、あまり意味をなさないかもしれません。これはひとつの「聖書」だといったほうがよいかもしれません。ひとつの文学作品でこれほど圧倒的に広く深く愛されているものは、そうそう見当たらないでしょう。この作品の原典がフランス語で書かれているということ、このテクストがまぎれもなくフランス文学の傑作であるということに、私たち(仏文関係者)はもっとストレートに喜んでいいのだと思った次第です。さて、この授業はひとまず本日で終了となります。来週は休講とし、二週間後の7月23日に、予定通り「筆記試験」を行います。
 筆記試験の課題は、以下の通りです。「20世紀前半のフランス文学の作品(ひとつないし複数)について、関心のあるテーマを設定し、1600字程度(多少の増減は許容)で自由に論じなさい。資料等の持込は不可とする」。以上です。資料等の持込は不可ですので、この二週間で、扱う作品を読みこみ、テーマを絞っておくなど、しっかり準備して、気持ちよく試験に臨んでいただきたいと思います。皆さんの健闘を期待しております。