オリジナル状態に戻して読むことの大切さについて

 ヴァレリーの「コローをめぐって」を読んでいます。前に読んだ『ドガ ダンス デッサン』にせよ、「マネの勝利」にせよ、今皆さんと一緒に読んでいる「コローをめぐって」にせよ、いずれも最初は、ドガの絵と一緒にならんでいたり、マネ展のカタログの序文だったり、コロー版画展カタログの序文だったりしたわけで、ヴァレリーのテクストには、当然ながら、そうした画家の具体的な絵画や版画を踏まえた表現があちらこちらに挿入されています。私たちは、プレイヤード版やリーヴル・ド・ポッシュ版などでテクストだけを読んでいますが、これは邪道であって、本来のオリジナルの場所に戻して読んでやることが、ヴァレリーの言いたいことをより素直に読み取るためには必要なことと思われます。その意味で、2017年12月に、オルセーでの、ヴァレリーによるドガへのオマージュ展と合わせるかたちで、ドガの絵画・版画合計約50点とヴァレリーのテクストがセットになった1936年の初版本であるヴォラール版『ドガ ダンス デッサン』がガリマールから部数限定復刻出版されたことは慶賀すべきことと言えるでしょう。当時は現在の円換算で1冊あたり12万円~13万円もしたというヴォラール版が80年以上を経て、とりあえず250ユーロ(限定販売の割には安いというべきでしょう)で販売されることは、われわれにとって嬉しいことです。あとはヴァレリーが序文を寄せたマネ展カタログ(できれば展示された絵画の複製も一緒にのっているもの)とコロー版画展カタログ(これも作品の複製が一緒にのっているもの)があれば、オリジナル状態に戻して「適切に」テクストを読むことができるのですが、このあたりのことは私がちゃんと調べてみることにします。