今日は、まず、レーモン・クノーの詩集『運命の一瞬』所収の「詩法のために」から第3節の有名な部分「置き場所がよく 選び方もよければ/いくつかの言葉で詩ができる/一篇の詩を書くためには/言葉を愛してやればいいのさ」(安藤元雄訳)を読み、続いて、クノーの傑作『文体練習』(1947年)から幾つかの断章を選び、朝比奈弘治さんによる素晴らしい日本語訳(朝日出版社、1996年)を、原文と対照しながら、ゆっくり読んでみました。一部を読んだだけでも、クノーの「数え、計り、選ばれた言の葉」(49・頓呼法)を紡ぎ出す、言語表現への深い愛情と、その「骨身を惜しまぬ文学的営為」(同)の凄さが伝わってきて、パロディーの技の冴えにクスクス笑いつつ、その徹底した迫力に圧倒されます。より物質的・根源的な言葉の持つ力が動き出す現場に居合わせている、ポエチックな臨場感があります。興味を持たれた方は、是非、朝比奈訳と原文を並べて味わいながら、クノーワールドに浸ってもらいたいと思います。さて、次回は1月7日となります。お話は1月14日と合わせて、あと二回のみです。最終回の1月21日は筆記試験をやります。課題は「20世紀後半のフランス文学の作品(ひとつないし複数)について、関心のあるテーマを設定し、1600字程度(多少の増減は許容)で自由に論じなさい。資料の持込は不可とする。」というものです。冬休みの間に、作品を読み込んで、準備をしておくことをオススメします。それでは、皆さん、よいお年を。