今日も引き続きモディアノです。日本語で読める優れた「モディアノへの誘い」というかモディアノ論として、堀江敏幸さんの文章「濃密な淡彩――パトリック・モディアノ論のための覚え書き」(『書かれる手』、平凡社、2000年、所収)を少し紹介したあと、先週の続きで、『八月の日曜日』の一節を読みました。特に、堀江さんも「隠れた名場面」と評価する、パリの東の郊外、ラ・ヴァレンヌでの、ヴィルクール夫人との会話の場面を、じっくりと読んでみました。土地の文学的イメージとして、ラディゲの『肉体の悪魔』が重要なアンテルテクストになっているという訳者の指摘は勉強になりました。結局、モディアノに三週連続で付き合いましたが、他の作品もじっくり読んでみたくなりました。関心のある方は、堀江さんの文章をブックガイドにしながら、是非とも、モディアノワールドを「漂って」いただきたい、と思います。さて、これまでの授業では、小説ばかり取り上げてきましたので、次回からしばらくは、詩について、とりわけ、イヴ・ボヌフォワについて、話をしてみたいと思います。