お久しぶりです。今日は、これまで様々な機会にしゃべったことのある「クレオール文芸入門」の話をさせていただきました。この話は、一度聴けば済むというものではありませんし、また、私の関心の力点も、その後微妙にずれてきたりしていますので、その点、御了承ください。さて、世界のフランス語人口は約1億8千万ありますが、そのうちフランス本土の人口がおよそ6千万なので、残りの1億2千万はフランス以外の土地でフランス語を使っている人たちということになります。フランス文学概論が、フランス語による文学についての概論であるならば、フランス以外のフランス語文学についての一定の目配りも、当然、必要になってきます。今日は、セゼールの『帰郷ノート』から、ファノンの『黒い肌・白い仮面』を通って、1989年の『クレオール性礼賛』まで、一連の流れを、ごく簡潔に追ってみました。一通りテクストを辿った最後に、ドムトムの人々の現実的な感覚を代弁していると思われるミュージシャン・カリの「レゲエ・ドムトム」と「この島売ります」を聴きました。いい声です。『クレオール性礼賛』のアジテーション的な宣言文の持つ抽象的な力強さもいいのですが、セゼールの官能全開の肉体性とか、カリの音楽の等身大の切なさ感覚のほうが、より一層、私たちの琴線に触れてくるような感じがします。さてさて、講義としては来週14日が最後になります。再来週21日に筆記試験を実施します。内容は、以前、この日誌に記した通りです。今から準備をしておいてください。