水4フランス文学概論

今日は、先週の続きで、プルーストの『失われた時を求めて』から、マドレーヌ体験の続きの部分と、「見出された時」で開陳される文学論のところを、読みました。改めてテクスト場を観察してみると、最初の無意志的記憶の描写部分では「ふるえるtressaillir」…

開講しました!

今日は、プルーストの『失われた時を求めて』から、最初の無意志的記憶の例として、あまりにも有名な「プチット・マドレーヌ」の一節を読みました。普段とは違う事件の予感は、プルーストの文章表現そのもののうちに感じられるというシンプルな指摘をしてみ…

今日は、マラルメの初期詩篇をいくつか、読んでみました。理想の詩を書くことができない詩人の自虐が共通テーマでしたが、自分の無力を笑い飛ばす健康なユーモアと厳しい批評精神が感じられます。来週のこの時間、筆記試験を実施いたしますので、皆さん、頑…

今日は、ゾラの『居酒屋』をめぐって、舞台となるグット=ドール界隈の象徴性、ゾラにおけるマネの影響、『居酒屋』における水のテーマ系、以上三点について、宮下志朗先生の『読書の首都パリ』(みすず書房、1998年)を大幅に参照させていただきながら、お…

今日は、フローベール『感情教育』の続きです。石井洋二郎先生の文章の続きを紹介し、古くから安定して存在するポン・ヌフ橋の希望のイメージに対して、不安定な歴史をたどったコンコルド橋の不安のイメージもまた、フレデリックの心象風景の重要なトポスに…

今日は、前回(11月28日)の続きで、フローベールの『感情教育』のお話です。文章の魅力、なかでも、「吸い込む」「とろける」といった感覚的な表現の豊かさ、自由間接話法の自在な活用の効果(語り手の視点と登場人物の視点の双方をいいとこどりした叙…

今日は、フローベールの小説『ボヴァリー夫人』第2部第8章の有名な「農事共進会」の場面をゆっくりと読んでみました。政治の紋切型言説と恋愛の紋切型言説とがパラレルに展開され、双方の言葉の空虚が浮き彫りになるという、じつに印象深いところで、何度読…

今日は、前回に引き続き、ボードレールについての特別篇として、5月22日に開催された、アントワーヌ・コンパニョン先生(コレージュ・ド・フランス教授)の講演会「写真映りのよい詩人―ボードレールの現代性」のDVDをプロジェクターに映し出して、ほぼ全…

今日は、ボードレールの散文詩「駄目なガラス屋」における間テクスト性について、吸収したモデルとしてのポーの「天邪鬼」と反抗すべき敵としてのウーセイの「ガラス屋の歌」を紹介し、ボードレールの作品テクストと並べて、眺めてみました。こうして、関係…

今日は、バルザックの『ゴリオ爺さん』から三つのシーンを取り上げて、読みました。この小説の主人公は二人いて、ひとりはタイトルにある「ゴリオ爺さん」、もうひとりがラスティニャック青年です。授業では、うぶなラスティニャック君に世間での成功のため…

今日は、スタンダールの『赤と黒』から、印象深い三つのシーンを選んで、原文の表現も味わいつつ、紹介してみました。前回読んだ『アドルフ』とはまた違った意味で、時代の鬱屈というものが、スーパーヒーロー・ジュリヤンのロマン主義的大活躍によって、か…

今日は、バンジャマン・コンスタンの『アドルフ』を紹介し、第3章を全部、読んでみました。日本語訳のほか、Gallicaで入手した1816年の初版のテクストも、参考までに紹介しました。小説が始まって間もない第3章で、アドルフのエレノールへの恋愛は精神的にも…

今日は、ロマン主義演劇のマニフェストとして名高い、ユゴーの『エルナニ』の冒頭部(第一幕第一場)をじっくりと読み、古典主義の作劇法や詩法にどのように違反しているのか、ということを確認しました。この冒頭部は喜劇的な要素が多く、今読んでも十分に…

今日は、前回のルソーに続いて、いわゆる前ロマン主義的な詩の例としてドリール師とアンドレ・シェニエの詩を紹介し、そこに古典主義からロマン主義への移行期の徴を読み取ったのち、一気に、1820年の代表的ロマン主義詩篇、ラマルチーヌの「みずうみ」をゆ…

開講しました!

本日、開講しました。最初に授業内容、成績評価の方法を説明したのち、さっそく授業に入りました。今回は、「私」の「時間」が濃密に描かれる現代的な文学の始まりとしてジャン=ジャック・ルソーの自伝『告白』と『孤独な散歩者の夢想』から、ヴァラン夫人…

筆記試験実施

今日は、予定通り、筆記試験を実施しました。試験を受けた方々、たいへんお疲れ様でした。答案をざっと拝見したところ、なかなかの力作ぞろい(のよう)です。これからじっくり読ませていただくのが楽しみです。みなさんそれぞれいろいろとお忙しいのでしょ…

今日は、アンドレ・ブルトンの『シュルレアリスム宣言』(1924年)と『ナジャ』(1928年)を紹介しました。「うろたえた目撃者」にしかなれない「断崖型の事実」は、一線を超えると「自分自身との平和な関係の完全な喪失」に至ってしまうかもしれない危険な…

今日は、コレットの代表作『シェリ』(1920年)を読んでみました。「薔薇色」がたくさん出てきました。美味しそうな食べ物や飲み物もふんだんに出てきました。豪奢な甘い生活のなかで、確実に過ぎていく時間の感覚、老いの予感というよりはリアルな実感……そ…

今日は、ポール・ヴァレリーの詩「海辺の墓地」についてお話しました。「海辺の墓地」については、東北大学出版会から出ている人文社会科学講演シリーズV「生と死への問い」に拙文を寄せました。今日の話も多くはそれに基づいています。難解とされる詩篇も、…

今日は、プルーストの『失われた時を求めて』から、プチット・マドレーヌ体験のシーンと、スワンが夜のグラン・ブールヴァールをオデット求めてさまようシーンを読んでみました。物語がドラマチックに展開するところも面白いのですが、息の長い、くねくねと…

今日は、マラルメの初期の詩篇を三つ(「陽春」「鐘つく人」「青空」)読みました。いずれもテーマは共通で、理想の詩を追い求めているが、なかなか理想の詩が書けないので嘆いている詩人の自虐的な詩です。意味内容はネガティヴなのですが、こうして詩の形…

今日は、ゾラの『居酒屋』をめぐって、宮下志朗先生の論文を参照しながら、ゾラの文学の絵画性(文章規範としての絵画)と、液体の隠喩の効果などを、確認してみました。こうして、ゾラのテクストを注意深く眺めてみると、至るところ、光と影のコントラスト…

今日は、ランボーの『地獄の季節』から「錯乱II−言葉の錬金術−」の章を読んでみました。散文と韻文が交互に置かれた、自作アンソロジー紹介のような文章ですが、そこには、「新しい詩学」を求めつつ、自我の変革を遂げようとする話者の実存的な試みも感じ取…

今日は、フローベールの『ボヴァリー夫人』から「農事共進会」のシーンを読みました。二つの言葉(政治演説の言葉と恋愛の口説き言葉)の重なりの面白みと、紋切り型への強烈な批判が伝わってくる、きわめて意識的なテクストであることを理解していただけた…

 開講しました!

今日は、まず成績評価の方法や、今後の授業予定について説明したのち、さっそく19世紀後半の概観の第一回としてボードレールの『パリの憂鬱』から第9番の散文詩「駄目なガラス屋」を例に挙げ、テクストをひととおり読んでから、先行テクストとの関連の二形態…

今日は最終回、予定通り筆記試験を実施しました。普段よりも多くの方々が(?)一発勝負の筆記試験を受けたようです。古典作品をなにかひとつしっかり読んで、あれこれ考えて、文章にまとめてみるという経験は、おそらく、皆さんの知的財産として生きるもの…

今日は、スタンダールの『赤と黒』、そして、バルザックの『ゴリオ爺さん』を駆け足で紹介しました。ジュリヤン・ソレルの愛読書は、ルソーの『告白』とナポレオンの『セント・ヘレナ日記』ですが、そうした文学的系譜を証明するような、征服のボナパルティ…

今日は、ロマン主義を古典主義との対比で図式化して説明したのち、代表的な抒情詩としてラマルチーヌの『瞑想詩集』から「みずうみ」という有名な詩を読んでみました。最後の祈願文の連続は、魂の昂揚を劇的に示した絶唱です。先週読んだルソーの「愛の幸福…

今日は、ルソーの『告白』第六巻冒頭部と『孤独な散歩者の夢想』第十全文を並べて読み、満ち足りた「愛の幸福」体験がどのように語られているかについて、見てみました。「真に生きた」と言えるあの頃、ただひたすら「享受」するだけで完全に幸福だったあの…

今日は、18世紀フランス文学の流れについて概説したのち、ヴォルテールの『カンディッド』とディドロの『ダランベールの夢』の一部を紹介しました。『カンディッド』はミュージカル化されていて、ちょうど今、東京の帝劇で上演されているようですし、過去の…