今日は、スタンダールの『赤と黒』、そして、バルザックの『ゴリオ爺さん』を駆け足で紹介しました。ジュリヤン・ソレルの愛読書は、ルソーの『告白』とナポレオンの『セント・ヘレナ日記』ですが、そうした文学的系譜を証明するような、征服のボナパルティスム(レナル夫人の手を握る戦いに彼は勝ちますが、そのシーンには、当然ながら戦闘の比喩が満ちています)と真情吐露のルソー主義(ラストに近い陪審員向けの演説における、堰を切ったような率直な言葉の連続)がうかがわれる場面を特に取り上げました。『ゴリオ爺さん』のほうは、ラスティニャック青年を導く二人の「先輩」のアドバイス場面(ひとつはボーセアン夫人の社交界出世の裏技についての指南、もうひとつはヴォートランによる手っとり早い出世法の指南がなされる場面)を読み、ラスト・シーンでラスティニャック青年が、ペール・ラシェーズ墓地の高みから高級社交界の存在するアンヴァリッドあたりを見おろして、俺とおまえの勝負だ!というところを読みました。両作品とも、田舎出身の野心的な青年がパリで出世していく上昇物語である点は共通ですが、ジュリヤンが古典劇の主人公のような気品を持つのに対して、ラスティニャック君はもっと世俗的というか現代的なヒーローであるように感じました。さて、概論の講義は今日にて終了。来週はいよいよ筆記試験です。繰り返しますが、対象作品は中世から19世紀前半までのフランス文学から選んでください。皆さんの健闘を願っています。