水4フランス文学概論

最終回の今日は、予定通り筆記試験を実施いたしました。皆さん、力作を提出されたようで、これから読ませていただくのが楽しみです。成績評価方法は授業の最初に申し上げた通り、出席2割+筆記試験8割となります。これから授業がない2月3月は比較的時間が持て…

今日は、ゾラの『居酒屋』から、第2章冒頭部の飲み屋「アソモワール」の店内の印象派絵画のような描写、とりわけ、蒸留器の奇怪な迫力と、40歳の太った店主に10歳の少女が酒を200円分(4スー分)コップにくださいと頼むシーンをゆっくり読んでから、宮下志朗…

今日は、マラルメの青年時代の実存的なメタポエムを二篇、「陽春」と「鐘を撞く人」を読み、最後に少々急ぎでしたが「蒼空」を読んでから、友人カザリス宛ての手紙の一節から「ものではなく、ものが産み出す効果を描くこと」という象徴主義の基本原理を紹介…

今日は、ボードレールの続きで、都市を歩いて詩を作る詩人像を示す韻文詩「太陽」を読んでから、散文詩集『パリの憂鬱』の序文「アルセーヌ・ウーセに」を読み、現代人の感情や意識の複雑なリアリティを示すような詩の理想、相反する諸要素の統合を目指すオ…

今日は、フローベール『感情教育』のプリントの続き、3番と4番をゆっくり読み、表現技巧とその効果について解説しました。残り時間でボードレールの詩「コレスポンダンス」を読み、ソネットの形式、脚韻、この詩のポイントについて解説しました。次回も引き…

今日は、フローベールの『感情教育』から冒頭部(船が出発するシーン)とその少し先の部分(アルヌー夫人が登場するシーン)の日本語訳とフランス語原文を丁寧に読みながら、時制(半過去と単純過去)の効果や表現の象徴的意味などについて詳しく解説しまし…

今日は、フローベール『ボヴァリー夫人』から小説の中心部に置かれた、有名なエピソード「農事共進会の場」を読みました。政治と恋愛という二つのレベルの紋切り型表現が交互に置かれた、フローベールの言語意識の現代性がダイレクトに伝わってくる箇所でし…

今日は、バルザックの『ゴリオ爺さん』から、三つの場面を読みました。一つ目はボーセアン夫人による処世術指南、二つ目はヴォートランによる処世術指南で、共にキーワードは「parvenir 出世する」でした。三つめは最後の埋葬シーンです。しっかり読んでみる…

今日は、スタンダール『赤と黒』から三つの場面を取り上げて、読解を試みました。ナポレオン主義者の若きジュリアンは一方でルソーの申し子でもあり、征服者のエネルギーと共に、平等主義的・共和主義的・革命思想をも備えた青年として造形されています。前…

今日は、テオフィル・ゴーチエの『青春の回想―ロマン主義の歴史―』(1874年)から有名な「エルナニの合戦」(1830年)の思い出を語った部分をじっくりと読みました。詩句の在り方をめぐって激しく繰り広げられたこの古典主義とロマン主義の戦いはフランス文…

今日は、コンスタンの『アドルフ』について概略を説明したのち、全10章あるうちの第3章を全部(岩波文庫版で約10頁)を読んでみました。一読すると、これはロマン主義(アドルフ)が古典主義(エレノール)を征服する話ではないかと、思えるところもあります…

今日は、ルソーの『告白』第六巻冒頭の有名な「レ・シャルメットの牧歌」のくだりと、やはりこの絶対の幸福の時間について書いた『孤独な散歩者の夢想』最後の「十」番を並べて、読みました。「あら、ツルニチニチソウがまだ咲いているわ」という夫人の台詞…

開講しました!

第一回の今日は、ルソーの略年譜を一通り追ってから、『告白』第二巻のラスト部分、いわゆる「マリオン事件」のくだりを読んでみました。事件の経緯を説明したあと、ルソーによるコメント(言い訳)が記されていますが、複雑にねじれていて、面白いところで…

本日は、パリ西ナンテール大学准教授ジュリアン・シュー先生による特別講演「愛書趣味と小雑誌」が行われました。山形大学の合田先生にご協力いただきました。19世紀末の小雑誌のメディアとしての特徴を網羅的に解説された、素晴らしい講演で、大いに刺激を…

今日は、フランス語圏クレオール文芸の現在について解説しました。セゼール、ファノン、ダマス等のテクストを取り上げ、最後に、カリの音楽を紹介しました。フランス語の文芸表現の幅広さを知る機会になったとすれば嬉しい限りです。来週は特別講演です。再…

今日は、モディアノの『八月の日曜日』とレダの『パリの廃墟』から、濃密な土地の詩学を読み取りました。それぞれの訳者である堀江敏幸さんの解説から、明快なガイドとなる部分もあわせて読みました。パリを訪れた際は、是非、地下鉄6号線のビラケムとパッシ…

今日は、モディアノ『ドラ・ブリュデール』を読みました。抑えたドキュメンタリータッチの筆致が極めて哀切な効果を生んでいる傑作です。絶滅収容所に送られたユダヤ人の「抽象的な」歴史の背後に「具体的な」一個の生きた痕跡を辿ろうとする追跡小説という…

今日は、モディアノのゴンクール賞作品『暗いブティック通り』を紹介しました。失った記憶を取り戻そうと、主人公はひたすらパリの街を歩きます。道はこの小説の重要な登場人物になっています。次回(12月6日)は、同じくモディアノの『ドラ・ブリュデール』…

今日は、レーモン・クノーの『文体練習』の一部を読み、その多彩な文体の技に触れました。そのあと、吉田加南子さんによるクノーの詩「詩法のためにIII」の解説を読みました。ついでに、同じく吉田さんによるボヌフォワの詩「鉄の橋」の解説も読んでみました…

今日は、デュラスの『愛人』のテクスト抜粋を読みました。語り手の回想の時間と空間が多層性を成していることを、実際のテクストに当たって確認しました。特に、戦時下の、ひと通りのない、がらんとしたパリの街を背景に思い出される二人の女性の形象の特徴…

今日は、デュラスの『モデラート・カンタービレ』について解説しました。男女の痴情のもつれかと思われる殺人事件をオリジナルにして、想像界での第二のエロス&タナトスのドラマがアンヌとショーヴァンの間で展開します。夕方に逢うのでどうしても西日の描…

今日は、サン=テグジュペリの『星の王子さま』と『人間の大地』を読み、「砂漠が美しいのは、どこかに井戸が隠れているからだよ」という王子さまのひとことの背後に、飛行機のパイロットだったサン=テグジュペリ自身による砂漠での遭難の体験があることを…

今日は、カミュの『異邦人』から第一部ラストシーン(アラブ人殺害の場面)と第二部ラストシーン(司祭を前にキレるムルソーの自由間接話法の場面)を読み、「距離感」を表現する「不在の文体」(バルト)を観察し、銃弾の追加四発の意味などを考えました。…

今日は、セリーヌの『夜の果てへの旅』について、重要な箇所をいくつか抜粋して、解説してみました。崇高と郊外がキーワードでした。アルシードとモリーの天使的崇高性は哀切です。また、ランシーという郊外の街の名前の象徴性についても説明しました。セリ…

開講しました!

今日は、初回。授業概要と成績評価の方法を説明したのち、『はじめて学ぶフランス文学史』(2002年、ミネルヴァ書房)から20世紀後半の文学についての解説記事を紹介しながら、全体の概観を試みました。やはり政治的・歴史的な変化が大きな時代なので文学も…

最終回

今日は、予定通り、筆記試験を実施しました。お疲れ様でした。皆さん、力一杯書いてくださったようです。フランス文学の日本語訳はたくさんあります。興味のおもむくままに、自由に、読み続けてくだされば幸いです。文学作品の読書が、皆さんの心の励ましと…

今日は、授業としては最後となります。ブルトンの『ナジャ』の続きを読みました。アラゴン事件にまつわる偶然の一致の話、そして、ナジャとの食事と散歩の話、いずれも不可思議な「符号」や「接近」の実例でした。しかし、『宣言』にあったように「不可思議…

今日は、ブルトンの『シュルレアリスム宣言』と『ナジャ』の一部を紹介しました。シュルレアリスムというと現実を超越したようなイメージがありますが、ブルトンのテクストを読んでわかる通り、根本的に穏当な理性主義であり、問題は想像力の解放であること…

今日は、ヴァレリーの1919年の文明評論「精神の危機」を読みました。第一次世界大戦終結直後に書かれた、歴史的条件の強いテクストですが、詩人ヴァレリー独特の歴史認識やヨーロッパ論の基本がうかがえます。美徳が悪徳を生み、無が無限に豊富でありうる、…

今日は、ヴァレリーの『レオナルド・ダ・ヴィンチ方法序説』の冒頭部をデカルトの『方法叙説』の冒頭部と比較しながら、両者の人間論の共通性について解説しました。次回はヴァレリーの『精神の危機』を読む予定です。