水3ヴァレリー『魅惑』

最終回

今日は、ヴァレリーの長詩「海辺の墓地」を読んできた授業の最終回。ローラーさんの注釈のまとめの部分のうちp.225からp.227までのところ――この詩は読者を詩の生成の現場に巻き込むメタポエムであること、この詩の全体にわたって数々のシンメトリー(賞賛と…

今日は、「海辺の墓地」の最後の二つの詩節、第23詩節と第24詩節を読み、ローラーさんの注釈にも一通り目を通しました。この詩の最後の行は、詩の最初の行と対応していて、ひとつの円環が閉じる形になっています。思考で行き詰った果ての打開の道は、やはり…

今日は、先週に続いて、「海辺の墓地」第22詩節を読みました。第21詩節に出てきた「ゼノン」については、ローラーさんが註で書いているように、「カイエ」のいろいろな箇所で言及が見られます。その中からCNRS版第5巻最終ページ(p. 914)の一番下のフラ…

今日も引き続き「海辺の墓地」です。第20詩節と第21詩節の読み、ローラーさんの注釈の読みをやりました。第21詩節のラストの部分は、「大またに走って動かないアキレウスだなんて!」そんな変な詭弁はやめてちょうだい、といったニュアンスがあるように感じ…

今日は「海辺の墓地」の第19詩節と第20詩節を読みました。先週と同じく、ローラーさんの注釈の読解をゆっくりと進めました。一部に、どうしてもよくわからない部分が残りましたが、le ver(蛆虫)が、死にまつわる否定的な形象として扱われているのではなく…

今日は、「海辺の墓地」の第18詩節と、それについてのローラーさんの注釈を読み、いろいろと考えてみました。最初、ローラーさんの注釈の文章が難解で、何を言おうとしているのか、みんなで知恵を絞ってみましたが、よくわからず、困ってしまいましたが、も…

今日は第17詩節。ローラーさんの注釈を丁寧に読むことに集中しました。注釈p.219の表現「稀に見る大胆な言葉遊び」は、直接的にはvaporeuse/poreuseの脚韻と、意味的な連関(vousという代名詞の消失がvaporeuseという語の意味に対応し、「私の存在」がporeus…

今日は『海辺の墓地』の第16詩節を読み、ローラーさんの注釈を精読しました。注釈を一字一句ゆるがせにせず、その意味するところを十分に考えながら、注釈者の思考に寄り添ってみる、という経験もなかなか重要で、着実な読解共有感覚を味わうことができると…

今日は第15詩節を読みました。13、14と、難解で、イメージしにくい部分が続いたせいか、この詩節は、具体的で、わかりやすく、また哀切な調子もあって、ノリよく読めました。死と生の間で、血/赤/エネルギーが移動した感じ、生命が花のほうに移っていった…

今日は、ヴァレリー自身による朗読を聞きながら、「海辺の墓地」の第13詩節と第14詩節を読みました。ここは難しいところですが、1917年の初稿段階から、ほぼ書かれていたところで、全体の中でも、大きな手直しをこうむることのなかった部分です。ローラーさ…

開講しました

いよいよ10月。新学期の始まりです。今日は「海辺の墓地」の全体の構成について、9月6日の「みやぎ県民大学」の資料を活用して、説明しました。細かく読む作業が大事であることはもちろんですが、全体の眺め、大きな流れを抑えておくということも大事です。…

最終回

今日は「海辺の墓地」の第9節から第12節まで読みました。テーマは海から墓地へと移っていきます。第12節に現れる「昆虫」は果たしてセミか、アリか、あるいは、別のものか。イメージとしては、人間の肉が落ちて、骸骨というエッセンスへと還元されてい…

今日は「海辺の墓地」の第7節と第8節をゆっくり読んでみました。第8節は、詩がなかなか書けない詩人をうたったマラルメの初期作品を思い出させるような、ヴァレリーによるメタポエム(詩作をめぐる詩)です。「詩の源流で」、完全な無の段階と作品の片鱗…

前回の復習をしてから、「海辺の墓地」の第5および第6詩節を読みました。ローラーさんの注釈は難しいところがかなりあって、読み取るのがたいへんです。このままだと注釈を読むことに疲労してしまうので、その愚は避けたいところです。次回は、とりあえず…

「海辺の墓地」の読みに入りました。全部で二十四節から成る長詩です。今日は第四節まで一応眼を通したという感じです。いやあ、難しいですねえ。イメージのしやすいところとイメージのしにくいところがあります。これはどういうことを言っているのだろう?…

今日は「室内」を読みました。アレクサンドラン8行の短詩ですが、密度は濃く、考えなければならないところの多い精妙な詩です(ヴァレリーの詩は他もだいたい「濃い」ですけれども)。女奴隷が鏡に入って以降のヴィジョンについては、具体的な動作をイメージ…

今日は「失われた酒」に関するローラーの注釈を読み進めました。ヴァレリーの「カイエ」を参照した部分までは踏み込まずに、各詩節のコマンテールを丁寧に読みました。ローラーさんは最後のフィギュールを「神々」の到来と取っているようです。このあたりは…

今日は「失われた酒」Le Vin perduのテクストをひととおりゆっくり読んでみました。大海にワインを、虚無への捧げものとして注ぐ。なぜそんなことをしたのかはわからない。薔薇色の煙のあと、海は元通り透明に。しかし!(ここで奇跡が起こる)ワインは失わ…

「柘榴」の注釈の検討の続きです。まず、ローラーの注釈の残りを片づけ、ピエーロの注釈の一部を読みました。ピエーロは特にアンテルテクストとの関係を詳しく述べています。後半は、天才と狂気のテーマをかなり自由に展開していて、ヴァレリー研究者として…

「柘榴」の暗誦をしたのち、ローラーの注釈を読みました。次回はローラーの注釈の残りを読んでから、ピエーロの長い注釈を要約的に見ていきたいと思います。それにしても、暗誦は物質としての言葉そのものに接近するための格好の手段ですね。いつでもアタマ…

今日は「柘榴」のテクストをひととおり読んでみました。語彙、文法、構文などに注意しながら、とりあえずは大雑把であっても、とにかく全体のイメージをつかむように努めました。来週は、今日読んだところで、もうひとつすっきりしない部分を中心に、ローラ…

今日は前回のローラーの注釈のポイントを復習してから、テクスト全体をもう一度、ゆっくり解釈しました。眠るお前の魂の奥底の秘密はわからないけれども、お前のフォルムは目覚めていて、それが私の目に訴えかける。とても官能的で、知性的な味わいの深い、…

今日はローラーのコマンテールを読み進めました。ヴァレリーが内部押韻や畳韻(同一子音反復)や半諧音(同一母音反復)などの音楽的手段を総動員している様子に触れてから、先行テクストについて述べた部分は省略して、さっそく各詩節の分析をたどってみま…

開講しました

授業概要と成績評価の方法などを説明したのち、さっそくクラシック・ラルース版で「眠る女」(『魅惑』唯一の正韻ソネット)の読みに入りました。イメージがよくつかめるまで、構文・語彙などをゆっくりと解きほぐしながら、4行だけ読みました。来週は、この…