今日は「室内」を読みました。アレクサンドラン8行の短詩ですが、密度は濃く、考えなければならないところの多い精妙な詩です(ヴァレリーの詩は他もだいたい「濃い」ですけれども)。女奴隷が鏡に入って以降のヴィジョンについては、具体的な動作をイメージすることもできますが、それ以上に、イデアルな象徴性とでもいった感じも漂っているように思います。あまり単純に図式化するとフェミニスト批評の餌食になりそうですが、基本的なイメージは、たしかに、アタマの仕事をする夫と、それを邪魔することなく家事にいそしむ美しい妻という形なのでしょうね。しかし、そのイメージを基本にしつつ、この詩の世界はさらに広がりと深みを見せていて、かなり自由な解釈を許すテクスト空間になっていると思います。疑問点はいくつも出てきたのですが、とりあえず放っておきます。来週から7月。この授業もあと4回を残すのみとなりましたが、全力を挙げて、長編「海辺の墓地」を読みます。ヴァレリーの詩のなかでも、最も有名な詩のひとつです。今日は、テクスト、ローラーの注釈など大量の資料を配りました。来週は8節分を読む予定です。予習をよろしくお願いします。