最終回

 今日は、ヴァレリーの長詩「海辺の墓地」を読んできた授業の最終回。ローラーさんの注釈のまとめの部分のうちp.225からp.227までのところ――この詩は読者を詩の生成の現場に巻き込むメタポエムであること、この詩の全体にわたって数々のシンメトリー(賞賛と畏怖、矜持と謙譲、悲劇と喜劇、ペーソスとユーモア、受動的観想と能動的反応、光と陰、高さと深さ、不在と現前、沈黙と喧騒など対立イメージの反復的照応)が総動員され官能と瞑想の調和的な運動が描き出されていること、感覚sensationを基盤にした感情affectiviteと抽象abstractionによる世界認識モードをかわるがわる用いることによって主人公の魂の状態=読者の魂の状態が多様な形で表象されていること、などが熱く語られているところ――をじっくり味読しました。この実に古典的な「作品」(まさに語源に忠実な意味で、徹底して「作られた」ポエムです)を、ゆっくりと時間をかけて、難解さにめげずに、一通り読み通すことが出来たことを素直に喜びたいと思います。複数の人間が集まって、ああでもない、こうでもない、わからなーい、と悩みつつ、集中的にテクストに対峙し、問題意識とテクスト解釈を(ある程度までは確実に)共有することが出来た幸福を喜びたく思いますと共に、付き合ってくださった参加者の皆さんに、心より御礼申し上げる次第です。長いこと、お疲れ様でした。