今日は、先週に続いて、「海辺の墓地」第22詩節を読みました。第21詩節に出てきた「ゼノン」については、ローラーさんが註で書いているように、「カイエ」のいろいろな箇所で言及が見られます。その中からCNRS版第5巻最終ページ(p. 914)の一番下のフラグメントを読んでみました。運動と無限分割は切り離して考えなければならないのに、それを一緒にしてしまっているところにゼノンの背理がある、と書かれています。ヴァレリーにとってゼノンのパラドックスはいろいろなことを考える際の基本的なトポスであったように思われます。さて、そのZenonという単語、否定のnonという鼻母音と「ゼ」という音の効果で、たしかに、何だか震える感じ、それが反復されると、弓矢が空気を貫いて立てる振動音を擬音的によく表現しているような気もします。第22詩節は、肉体と生命のエネルギーが爆発するところです。この部分は、海で泳ぐのが好きだったヴァレリーの具体的な官能感覚がいい感じで弾けているところ、ヴァレリー嫌いだったボヌフォワもここはいいと認めるであろうところ、です。あと残すところ二節となりました。急がず、ゆっくり読んでまいりましょう。