火2ヴァレリーの詩を読む

今日は、「蛇の素描」のラスト(310行目)まで、読み終えました。イヴ誘惑の思い出語りが終わり、再び冒頭の時間と状況に戻ります。第28詩節と第29詩節における大樹のイメージは上昇・成長のイメージそのものです。第30詩節の後半では、蛇の負けん気ぶりとい…

今日は、「蛇の素描」第27詩節の終わり(270行目)まで、読みました。脚韻や音の特徴が物語を作っているという点について触れました。第24詩節ではombreが支配的ですが、ここでは知恵の木がイヴの裸体に影ombreを落とします。第25詩節では-brの震える音や鼻…

まずレポートのお知らせをしました。締め切りは1月27日(火)。課題は前期と同様です(フランス詩一篇について原文と自訳を示した後、2000字程度で解説。「形式と内容の一致」という観点に触れること)。冬休みの間に素材を決めて準備されることをおすすめし…

今日は、第21詩節の終わり(第210行)まで、読みました。蛇がイヴを誘惑しているシーンが続きます。音の工夫が非常に濃密な部分です。文字で見ているだけではわかりにくいことが、音のレベルでは明快なことが時々起ります。たとえば、第18詩節の3行目の「エ…

今日は、「蛇の素描」の第17詩節の終わり(170行目)まで、読みました。第15詩節には流音のアリテラシオンがたくさん出てきますが、これはイヴの髪の毛やからだの、流れるような様子を描いています。149行目に現れる「nuqueうなじ」という単語はヴァレリーと…

今日は、第14詩節の終わり(140行目)まで、読みました。第13詩節から第27詩節までは、人類最初の女性であるイヴを襲った蛇(=悪魔)の回想部分です。123行目のespritsは掛詞になっていて、精霊たちという意味と息吹という語源的意味が重ねられています。註…

今日は、第11詩節の終わり(110行目)まで、読みました。第9詩節には鼻母音(ain/an)がたくさん出てくるほか、「クレアット/ベアット」の内的ヒアートゥス(母音衝突)の脚韻が印象的です。古典作詩法はあらゆるヒアートゥスを嫌いますが、ここでの悪魔は…

今日は、「蛇の素描」の第4詩節から第8詩節まで、読みました。語り手(蛇=サタン)の呼びかけの対象が3〜5では「太陽」でしたが、6からは「天を支配する人」(=神)に変わります。太陽に対してはtuで呼びかけていましたが、神に対してはvousを使ってい…

今日は、復習と今後の予習の見通しを兼ねて、「句切り」の置かれる場所について、確認と練習をしてみました。地道な基礎作業ですが、詩句の物質性がよく感じ取られるので、詩をしっかり読むためにもよい訓練になります。第一詩節では8音節詩句の中で4/4の句…

今日は、「蛇の素描」の第二詩節の終わりまで、読みました。全体にi/yの音の響きが効いています。これは蛇の微笑みsourireの叙景に加え、i/yを発音したときの歯と舌の前景化、さらに7行目の「二股になった舌を出す」イメージの強化といった様々な効果を持っ…

今日は、p.84の下から9行目まで、読みました。「解説」の途中で終わってしまいましたが、「蛇の素描」という詩のテクストが引き起こしている問題性(プロブレマチック)がおおよそどのようなものか、古典的な議論の枠組みのようなものは感じ取れたと思います…

今日は、まず「惑わすもの」のこぼれ話として、ヴァレリー宛ての手紙に記されたジッドによる「替え歌」を紹介しました。そこには単にユーモラスな模倣の遊びだけでなく、ある若者へのジッドのより親密な思いも含まれているようです。続いて、「偽りの死せる…

開講しました!

前期に引き続き、ヴァレリーの詩集『魅惑』を読んでいきます。今日は、「風の精」と「惑わすもの」をざっと読んでみました。前期に読んだ「アポロンの巫女」はかなり長い詩(230行)でしたが、そのあと、小品が三つ続きます。「風の精」と「惑わすもの」はい…

今日は、フロランス・ド・リュシーさんの研究書から「アポロンの巫女」関連箇所の読みを、ひととおり最後まで、紹介、解説しました。第一次世界大戦の末期に書かれたこの詩には、フランス人としての詩人ヴァレリーの気魄が込められていることが、リュシーさ…

今日は、「アポロンの巫女」の生成研究の続きで、リュシーさんの論文のp.170の下まで、ざっと読んで解説しました。まず脚韻を決めていく詩人ヴァレリーの制作の様子が、草稿を追っていくと、よくわかります。形容詞をひとつ入れたいために他の前置詞を短いも…

今日は、フロランス・ド・リュシーさんの研究書から「アポロンの巫女」の源泉をめぐる論述をひと通り(p.162からp.166の下から4行目まで)、読みました。p.163の真ん中あたりに書かれていることがらは重要です。詩の源泉を探るのはきわめて微妙な問題ですが…

今日は、ヴァレリーの詩集『魅惑』の草稿研究として決定的な仕事であるフロランス・ド・リュシーさんの研究書から、「アポロンの巫女」の執筆経過に関する部分をコピーして配付し、特に、残されている草稿の中の最初の段階のものを、読んでみました。決定稿…

今日は、「アポロンの巫女」の最後の二つの詩節(第22詩節と第23詩節)を、読みました。最終詩節はイタリック体になっています。これは「新しい白い声」による神託を記した碑文であることを示すための工夫でしょう。一時、もうひとつの詩節(第24詩節)を付…

今日は、「アポロンの巫女」の第18詩節から第21詩節まで、読みました。巫女の心身の奥底から「秘密」がじわじわとこみあげてきます。それは死への欲動のようなものであると同時に生のエネルギーの爆発に向かう動きでもあるようです。第20詩節はまさに「二つ…

今日は、ヴァレリーの「アポロンの巫女」の13詩節から17詩節まで、読みました。「創造の力」「宇宙の手」に対して、巫女が、暴力的な状態では真の光、真の言葉は生まれない、と主張します。人間を超えた不可思議ではなく、あくまでも人間的な平和を巫女は願…

今日は、「アポロンの巫女」の9詩節と10詩節の復習をしてから、「転調」が印象的な11詩節そして12詩節を読みました。11詩節の1行目から2行目に書かれている「どんな竪琴にも転調が含まれている」という部分は、竪琴を歌=詩と考えれば、そのまま、詩は転調だ…

今日は、「アポロンの巫女」の第10詩節の終わりまで、読みました。大蛇ピュトーにメデューサが重なった恐ろしいイメージから一転して、第9詩節と第10詩節では、アフロディテをも超える美しいイメージが喚起されています。技巧面では、第8詩節の1行目から4行…

5月1日開催のウィリアム・マルクス先生のセミナーはたいへん勉強になりましたね。これからの授業でも時々参照させていただく予定です。さて、今日は、「アポロンの巫女」の4〜6詩節を、読みました。3〜5で我が身を嘆いた巫女は、6〜8でみずからの死を…

今日は、「アポロンの巫女」の第二詩節と第三詩節を、読みました。第二詩節では、猛り狂う馬を思わせる狂乱の巫女のイメージが、揺れ動き巨大化する黒い影(泳ぐ幽霊/トランス)のイメージによって強化されます。三脚台の舞台上から巫女の吐き出す長いモノ…

今日は、まず、5月1日(木)16時20分〜18時、東北大学文学部2階大会議室で開催予定のウィリアム・マルクス先生(パリ第10大学教授)によるフランス文学特別セミナー「ポール・ヴァレリー《アポロンの巫女》を読む」について、ご案内しました。ついでに、マル…

開講しました!

今日は初回なので、まず、この授業の概要、成績評価の方法などを説明してから、これまでの経緯をざっと説明しました。去年に引き続き、ヴァレリーの詩集『魅惑』を少しずつ読んでいきます。今年度最初に読む詩はLa Pythie(「ピュティア」「アポロンの巫女」…

今日は、「眠る女」についてのワルゼールの解説を、読みました。『旧詩帖』所収の同じく眠る女を描いた詩「アンヌ」と比較しながら、『魅惑』のほうのソネットがどのような特徴をもつか、わかりやすく述べられていました。同じテーマの二つの詩を、こうして…

今日は、ソネット「眠る女」の本文を、ひととおり読みました。モネスティエが「ヴァレリーの最も完璧に成功した音楽的作品」と形容する通り、アリテラシオンがふんだんに用いられていて、印象に刻まれる詩句が多く見られます。5行目については、文芸批評家の…

今日は、ワルゼールによる「帯」の解説の残り部分を片づけてから、次の詩「眠る女」に入り、モネスティエによる冒頭の説明を読みました。他のテクストを引いてきて、それとの比較で論を展開するというやり方は、対象を客観化してくれるので、非常に安定した…

今日は、「帯」についてのワルゼールの解説を268頁1行目まで、読みました。ある詩篇の解釈について、似たテーマが扱われている別のテクストを持ってきて、二つ並べて論じてみると、双方互いに照らし合うことがあり、それなりの説明が可能になる、というケー…