水4フランス文学基礎講読

今日は、『黄金仮面の王』を読み終えました。読みごたえ十分の物語でした。作品発表当時のシュオブの考えを、グードマールによる伝記の一節を紹介しながら、少しだけたどってみました。記号と(あるいは記号で)戯れることが彼のエクリチュールの力だという…

今日は、p.17の真ん中あたり、「彼女は自分の病が彼に見抜かれるのではないかと恐れた」というところまで、読みました。若い女に導かれて王は王国から遠く隔離された「哀れな者たちの町」に向かいます。この道行は哀切です。まったく隙の見られない文章が続…

今日は、p.15の12行目半ばまで、読みました。王は真夜中に家臣たちを集め、仮面をとるよう命じます。すると、ひじりの予言通り、彼らの素顔は、仮面の役割が予想させるものとは正反対の様相を呈しています。王はこのあと、思い切った行動に出ます。この短編…

今日は、p.13の上から12行目まで、読みました。p.12の1行目から17行目までの段落の描写は、p.8の1行目から13行目までの段落の描写と同じく、イメージを重ねて全体の基調を示す、いわば象徴主義的な描写の典型例になっています。今回は、無機質な金銀メタリッ…

今日は、p.11の下から8行目まで、読みました。黄金仮面の王が通り抜けていく祝宴の間の描写は、前回の霧のたなびく風景描写と同様、やはり、背景による前景の浮き彫りでしょう。「Il y avait 〜があった」という叙述が単調に三回繰り返されますが、その書か…

今日は、p.10の上から8行目まで、読みました。ついに、黄金仮面の王は自身の素顔の秘密を知ってしまいます。p.9の下から6行目に至る一段落分は、真実を知ってしまった王が茫然としている様子を、背景描写によって、逆に浮き彫りにしているように思われます。…

今日は、『黄金仮面の王』のテクストp.8の13行目まで、読みました。黄金仮面の王は、盲目のヒジリの不吉な言葉に不安を感じつつ、自分の素顔を確かめたいと思って、鏡がひとつもない王宮を抜け出します。森にたどり着いた王は木の枝を折りますが、その、折っ…

今日は、まず宿題の答え合わせをゆっくりと行いました。絶版となった参考書『実習フランス語教程』(白水社、初版1980年)の練習問題には文学作品からの抜粋も多くみられるようで、一文一文それ自体にかなりのオーラが感じられますね。また、機会があれば、…

今日は、マルセル・シュオブ『黄金仮面の王』を読む授業の第三回です。p.6の上から6行目まで、読みました。槍の刀身のきらめきと鳴り響きのなかを、生身の素顔をさらした盲目のひじりが入場します。彼は論理的で正直な感性の持ち主です。彼の鋭い観察は仮面…

今日は、p.5の真ん中あたり、「その乞食をここに通すがよい、と、黄金仮面の王は言った」という一文まで、読みました。単純過去形にもだいぶ慣れてきたのではないでしょうか。仮面をかぶっていない人間の生の顔を、生まれて初めて見るであろう王の心中の不安…

開講しました!

今日は、マルセル・シュオブの象徴主義的短編小説『黄金仮面の王』(1892年)の第一段落をゆっくりと読んでみました。動詞の単純過去形がテクストの舞台の前景における行為の「点」的瞬間を表すとすると、動詞の半過去形はテクストの舞台の背景の状態を描写…

今日は、配付したテクストのp.292のラストまで、読み終えました。これで、ユイスマンスのパリ情景集から約15ページ分のテクストを精読したことになります。たくさん辞書を引く必要がありましたが、文学テクストを読むということは、結局のところ、辞書を丁寧…

今日は、p.291の上から10行目まで、読みました。フォランタン氏は古本だけでなく古美術や絵画などにもかなりの目利きのようです。p.290の下からp.291の上にかけての部分では、いわゆる贋作を容易に見抜くフォランタン氏の眼力が語られています。また、骨董屋…

今日は、ユイスマンスの1881年の小説『流れのままに』からフォランタン氏の定食屋放浪記の続きを最後まで、読みました。p.333の最後の部分、今、大騒ぎしながら飯を食らっている学生たちが、やがては、偉くなって、名誉や地位で腹いっぱいになるのだろうか、…

今日は、87番のテクスト「ある定食屋〔ターブル・ドット〕」の読みに入り、p.331の下から10行目まで、読みました。あまり気の進まないまま、知人に連れられて、ある定食屋で夕食をとることになったフォランタン氏。行ってみると、ひどいところで……という、い…

今日は、p.329のラストまで、読みました。フォランタン氏のレストランめぐりは、なかなか哀切ですね。ユイスマンスの筆致は冷酷にして温和、特に、ハードボイルドなシーンの描写が悲しいものであればあるほど、温かいシーンはきらりと光ります。次回も予習を…

今日は、先週の続きで、p.327の下から11行目まで、読みました。なかなか落ち着くレストランが見つからず、仕方なく安食堂に行くのですが、やはり、げんなりしてしまうフォランタン氏の、少々滑稽な落胆の様子はおそらく読者の共感を誘うでしょう。「まずい、…

今日は、p.326の13行目まで、読みました。レストランの描写です。ユイスマンスの筆致はとても明快で、具体的な雰囲気が手に取るように思い浮かんできます。これは彼の用いる指示形容詞(ce/cette/ces)の持つ共通経験の喚起機能(「読者の皆さんもご存じです…

今日は、いよいよユイスマンス自身のテクストの読みに入り、56番の「ポンヌフ橋のセーヌ河」を、読みました。娼婦マルトがセーヌ河の欄干のテラスで不安な時を過ごします。彼女の目に映る事象のイメージは彼女の精神状態を反映して微妙なニュアンスを帯びま…

今日は、p.567のキリのよいところまで、読みました。ロクマンの文章はなかなか味わいがあります。ユイスマンスは何度もパリを離れて隠遁生活にチャレンジしたりしていますが、結局いつも、またパリに戻ってきます。そのパリのなかでも彼の生活の拠点は6区と7…

今日は、p.566の上から5行目まで、読みました。p.12の下のところ、「ユイスマンスならではの、気品のあるパリ訛りと同時に場末の隠語でできたあの言語」という表現は、これからユイスマンス自身のテクストを読んでいく際のひとつのヒントになりそうです。来…

今日は、p.12の真ん中の段落の終わりまで、読みました。ユイスマンスのパリは一筋縄ではいかない複雑なパリで、時には矛盾を孕みさえしているけれども、じつに魅力的なパリであることが、ロクマンの文章から伝わってきます。次回は、p.12の残りを片づけ、「…

今日は、p.11の上から10行目まで、読みました。ユイスマンスの初期作品には先行する作品の影響がいろいろとうかがえるという話でした。彼は、ボードレールと同じで、オスマン男爵(セーヌ県知事)によって作られた新しいパリよりも、古いパリに強い愛着を持…

開講しました!

初回の今日は、まず、授業概要と成績評価の方法などについて説明したのち、さっそくプリントを配付して、少し読んでみました。ユイスマンスのパリ論集がテキストですが、当面は、編者パトリス・ロクマンによる解説を読んで、基礎知識を仕入れましょう。今日…

最終回の今日は、「ドガとフランス大革命」の章を終え、次の「話題いくつか」の章を読みました。後者は、前半部が「ムッシュー・アングル」の話、後半部がギュスターヴ・モローの話でした。empyree(最高天)の語源はギリシャ語のempurosで「火でできた」の…

今日は、p.1184の上から12行目まで、読みました。マラルメとドガの微妙な関係、というか、一方的なドガの悪さに対してマラルメが(おそらくはかなりの程度)傷つくという構図の反復が描かれます。p.1182からp.1183にかけてのところ、息の長い文章が続いてい…

今日は、p.1182の下から7行目のcomprendre.まで、読みました。ドガのおじいさんとマラルメの先祖が敵対関係にあったというエピソードから、今度は、ヴァレリーの記憶にある画家ドガと詩人マラルメの関係について、二人の激しいコントラストが浮き彫りにされ…

今日は、p.1181の下から11行目まで、読みました。ドガの話でヴァレリーは興味深い事実に気づきます。「ヴェルダンの若きおとめたち」(プロシアの共謀者とみなされ、フランス革命政府はやがて関係者を処刑することになる)のひとりの婚約者と目されて、当局…

今日は、「ヴィクトル・マッセ街37番地」の章を終え、続いて「ドガと大革命」の章に入り、p.1180の真ん中少し上の引用符号が閉じるところまで、読みました。前者のラスト部分でマネへの言及が見られますが、「能力」「戦略的」など、近くでつかわれている言…

今日は、p.1179の10行目のombres.まで、読みました。p.1178の下段で、ドガの作品は、ドガの芸術的食欲の旺盛さと画家としての強力な注意力で苦しんだかもしれない、と、ヴァレリーは書いています。ドガの強力な知性は芸術にかんする多くの問題を提起し、日々…