今日は、p.1179の10行目のombres.まで、読みました。p.1178の下段で、ドガの作品は、ドガの芸術的食欲の旺盛さと画家としての強力な注意力で苦しんだかもしれない、と、ヴァレリーは書いています。ドガの強力な知性は芸術にかんする多くの問題を提起し、日々刷新される反省意識を誘ってやみません。ドガは「ムッシュー・アングル」の古典主義を大切にする一方、同時代のさまざまな芸術にも注意をはらいます。そのような内的・外的状況のなかで、独自の作品を生み出していくというのは、たいへんな苦労を伴うことであったに違いない、とヴァレリーは推測しているのだと思われます。このあたりの記述には、詩人として古典主義的詩法と現代的な問題意識との一致に心を砕いたヴァレリー自身の思いも重なっていて、ドガとの深い共感が感じられます。次回で「ヴィクトル・マッセ街37番地」は読み終わります。続いて、次の「ドガと大革命」を読んでいきますので、どうぞ予習をよろしく。