水5仏文概論

最終回

今日は、まずお二方に発表していただきました。カミュ『シーシュポスの神話』における意識の積極性。ジュネ『泥棒日記』におけるorgueil(自恃)の力。いずれも、最終回にふさわしい力の籠もった発表でした。まだ読んでいない人が、お話を聞いていて読んでみ…

今日はまず発表を三つ聞かせていただきました。サガンの『ブラームスはお好き』における孤独と恋愛のテーマ。バルトの『零度のエクリチュール』におけるエクリチュールの概念をめぐって。バルトの『批評と真実』における「旧批評」批判の射程。いずれも面白…

今日はカミュの『異邦人』について、まず、アラブ人殺害は「太陽のせいだ」というムルソーの人物像について発表をしていただきました。自分の気持ちに対して常に正直なムルソーは、通念的道徳コードの期待する言動をなぞりません(そこが彼の爽やかな魅力で…

今日は、まずプレヴェールについて、続いてブルトンの『ナジャ』について発表をしていただき、続いて私のほうから『シュルレアリスム宣言』の一節を紹介させてもらいました。お洒落な中にも凛とした批判的精神が漲り、音楽性と映像感覚に富んだプレヴェール…

今日は、まずヴァレリーの『ムッシュー・テストと劇場で』について、続いてコクトーの『恐るべき子供たち』について発表をしていただきました。『テスト氏』は、特に派手な事件が起こるわけでもなく、語り手の「私」が「テスト氏」という人物の様子や彼と一…

今日は、まずジッドの『狭き門』について発表をしていただきました。アリサの表象は一般に言われているほどプロテスタント的と形容されるべきものではなく、むしろ、「神への信頼感が欠如している」という遠藤周作の評言が紹介され、『狭き門』における「信…

今日はまずフランシス・ジャムについて発表をしていただきました。ジャムはクローデル、ジッド、ヴァレリー、プルーストと同世代の詩人です。パリから遠く離れたベアルン地方に暮らし、孤独な魂の悲哀と「永遠の愛の清らかさ」を、とりわけ一連の「驢馬(ろ…

今回と次回はプルーストのお話です。今日は、まず、担当の方に発表をしていただきました。『失われた時を求めて』から無意志的記憶の典型として「プチット・マドレーヌ」のシーンを中心に、知性の記憶は過去のエキスを保存しないというモチーフの反復、そし…

今日はランボーのお話。まず、1871年5月のいわゆる「見者(voyant)の手紙」二通を読みながら、「未知なるものへの到達」が詩人の課題であるとするランボーの詩学を紹介しました。マラルメやヴァレリーが「新しい詩学」という言葉を使っていたのと同じように…

今日はマラルメの話。難解というイメージが流布していますが、彼の若い時の「メタポエム」(詩と詩人についての詩)はテーマ的にはワンパターンで明快です。今日は五つの詩を読みました。「陽春」と「鐘をつく人」は共に理想の詩を書けない詩人の苦悩をうた…

今日はフローベール『感情教育』を取り上げました。アルヌー夫人宅からの深夜の帰り道、フレデリックがセーヌ川にかかるポン・ヌフ橋のうえで高揚する場面(空気を大きく吸い込んで、希望に満ちた可能態になりきる幸福なシーン)に特に注目しました。この場…

今日は、まず前回とのつなぎの意味で、フローベールの散文詩学あるいは純粋小説の考え方がうかがえる書簡テクストを紹介し、同時に、工藤庸子先生の『恋愛小説のレトリック――『ボヴァリー夫人』を読む』(1998年、東大出版会)から、言葉の物質性のレアリス…

今日は先週の続き。まず、阿部良雄先生の見事な指摘(『シャルル・ボードレール 現代性の成立』河出書房新社、1995年、pp. 296-299)を紹介しました。ボードレールvsウーセイの対立図式が、シャンフルーリvsウーセイの変奏であること、そして「『無能なガラ…

開講しました

後期のフランス文学概論が始まりました。まず予定表を配って、授業の見通しを説明しました。今週と来週は、ボードレールの『パリの憂鬱』から「駄目なガラス屋」を読み、このテクストをめぐる間テクスト的散歩をします。今日は、「駄目なガラス屋」の本文を…

文章の安定ということ

仙台は例年になく暑い日が続いていますが、皆さん、元気でお過ごしでしょうか。暑い暑いと言っているうちに、どんどん時間が過ぎていきます。猛暑も明日あたりから一段落して、平年並みという予報。当たってほしいものです。さて、皆さんから提出していただ…

最終回

スタンダールの『赤と黒』についてM君に、アレクサンドル・デュマ(ペール)の『三銃士』についてS君に、それぞれ発表していただきました。『赤と黒』のジュリアンのボナパルト的なところと最終的な魂の救済を願うところには、彼の愛読書がルソーの『告白』…

第十二回19世紀(2)

ユゴーについて二つ、ミュッセとバルザックについて一つずつ、今日は合計四人の方々に発表をしていただきました。ユゴーの『レ・ミゼラブル』が骨太な社会小説であることを具体的に指摘してくれたNさん、『クロムウェル』序文のロマン主義宣言(理論)が『…

第十一回19世紀(1)

今日はフランス革命直前のボーマルシェ『フィガロの結婚』と、革命後のシャトーブリアン『ルネ』、コンスタン『アドルフ』について、それぞれ発表していただきました。ボーマルシェの原作とモーツァルト作曲のオペラ台本を書いたロレンツォ・ダ・ポンテのテ…

第十回18世紀(2)

今日はまずアベ・プレヴォーの『マノン・レスコー』(1731年)についてH君の周到な発表がありました。「摂政時代(1715−23)を知る早道は『マノン・レスコー』を読むことだ」と言われるらしく、実際に、同時代の諸状況が作品の場にヴィヴィッドに反映されて…

第九回18世紀概観(1)

まず年表をもとに18世紀の流れをざっと概観したあと、ヴォルテールの『カンディード』、ディドロの『ダランベールの夢』、そして、少し遡って16世紀のロンサール恋愛詩について、それぞれ発表していただきました。特にNさんの『カンディード』についての発…

第8回17世紀概観(3)

今日は、まずラ・フォンテーヌの『寓話』について、ルソーによる批判を紹介しながら、大人向け、しばしば宮廷人向けの風刺がこもっていることを指摘したTさんの発表、続いてラ・ロシュフーコーの『箴言』について、人間の抜きがたい自己愛のテーマと理性の…

第七回17世紀(2)

パスカルの『パンセ』とラシーヌの『フェードル』について、それぞれ、担当の方の発表のあと、私のコメントと解説。いずれも、人間の弱さ、運命の強さ、といったところで、ジャンセニスムの考え方の反映が見られました。それにしても、パスカルはほんとに話…

中世、ルネッサンスと眺めてきて、17世紀に入りました。いよいよ、学生のみなさんによる10分間発表も始まりました。デカルトについてのAさんの発表はとても上手でしたね。この調子です。私の話(『方法序説』冒頭の二段落に見る人間平等論宣言と近代的自我…