第十二回19世紀(2)

セーシェル(マヘ島)

 ユゴーについて二つ、ミュッセとバルザックについて一つずつ、今日は合計四人の方々に発表をしていただきました。ユゴーの『レ・ミゼラブル』が骨太な社会小説であることを具体的に指摘してくれたNさん、『クロムウェル』序文のロマン主義宣言(理論)が『エルナニ』においてどのように具体化(実践)されているかということを緻密な対応関係の指摘によって明らかにしてくれたWさん、ミュッセの『戯れに恋はすまじ』における内面の闘争(善と悪/理想と遊蕩)のうちに、苦悩を引き受ける作者の真摯な姿を看取したT君、そして、バルザックゴリオ爺さん』のゴリオの父性の表象のうちに、キリスト的「受難Passion」の崇高性を読みとった上で、そのような受難を強いたフランス市民社会成立期の「金銭」の猛威について述べたS君。いずれも、十分な時間をかけて準備された、中身の濃い、好発表でした。授業時間内だけでは、とても、それぞれの発表の面白みや奥行きを十分に味わうことはできません。ですから、受講生の皆さんには、是非とも、発表者のみなさんが苦労して作成された資料を、時間をかけて、じっくりと、読み味わっていただきたいと思います。自分以外の人が、何に関心を持ち、その問題意識をどのようにプレゼンテーションしたのか、ということに注意すると、ひるがえって、自分自身の問題意識の「質」や、プレゼンテーションの改善点などが、客観的かつ具体的に見えてくるはずです。こういうことは、やはり、自分でも発表をし、他の仲間たちの発表を聞き、という経験を繰り返すなかで初めてわかってくることだろうと思います。後半は特に皆さんによる発表が主体となったこの授業の眼目は、そのあたりにあります。さてさて、ついこの間始まったばかりのようにも感じるこの授業も、来週で最終回となります。発表予定の四人の方々、最後のシメを、どうぞよろしく。それと、再度、レポート課題について触れました。テーマは19世紀前半までのフランス文学の作品からひとつ選んで、それについて自由に論じる、ただし、複数の参考文献を読むこと(単なる感想文は求められていない)。字数は四千字程度で、締切は8月3日(金)午後5時まで、提出先は今井研究室(8階816室)です。口頭発表しなかった人も、レポートは受け付けますので、受講登録された方々はなるべく全員、レポートを出してくれることを願っています。