第十一回19世紀(1)

セーシェル(ラディーグ島)

 今日はフランス革命直前のボーマルシェフィガロの結婚』と、革命後のシャトーブリアン『ルネ』、コンスタン『アドルフ』について、それぞれ発表していただきました。ボーマルシェの原作とモーツァルト作曲のオペラ台本を書いたロレンツォ・ダ・ポンテのテクストとを比較して、アンシャン・レジームの直接的な批判を展開した原作部分がオペラ台本では「これ以上言うのはやめよう、もう誰でもよく知っている」というセリフで省略された事情など、興味深い事実を指摘してくれたNさんの発表、また、『ルネ』の「世紀病」の症状とその背景を、アイデンティティ、家族、時代の、それぞれのクライシスとの関連で探ってくれたYさんの発表、そして、『アドルフ』のエレノールが、スタール夫人やシャルロットなど実際にコンスタンが関係した複数の女性像の複合的反映であることを、『セシル』をも参照しながら指摘してくれたSさんの発表、いずれも、論点が明確で、テクスト分析も説得的でした。途中、前回の授業の補足として、渡辺一夫『曲説フランス文学』に引かれているゲーテの言葉―「ヴォルテールとともに一つの世界が終り、ルソーとともに別の世界が始まる」―を挙げて、その説明を岩波文庫版『フィガロの結婚』の辰野隆による解説を参考に試みました。さて、この授業も残すところあと二回となりました。扱う予定の作家は、ユゴースタンダールバルザック、と、ビッグネームが続きます。担当の方々、暑さにめげず、ご準備のほど、よろしく。