第十回18世紀(2)

セーシェル(ラディーグ島)

 今日はまずアベ・プレヴォーの『マノン・レスコー』(1731年)についてH君の周到な発表がありました。「摂政時代(1715−23)を知る早道は『マノン・レスコー』を読むことだ」と言われるらしく、実際に、同時代の諸状況が作品の場にヴィヴィッドに反映されていることを、具体的な事例を挙げて分析してくれました。非常に面白かったです。続いて、S君によるルソー『孤独な散歩者の夢想』の発表。芸術家の肖像として、デューラーの「メランコリアI」の図版と「物を書くことの憂鬱に悩まされ」るルソーの姿を比較してテーマ論的に分析してくれました。これも新鮮でした。H君はヨーロッパ史、S君は西洋美術史、と、それぞれの専攻を生かした好発表でした。
 残り時間は、私が、ルソー『告白』第6巻冒頭のレ・シャルメットの牧歌のくだりと、絶筆となった『孤独な散歩者の夢想』十を合わせて読み、ルソーにおいてW夫人との「完全な幸福」の「享受jouissance」の経験がいかに永遠化(=表現)されているかということを見ました。ルソーがah voila de la pervencheと叫んだセリフは30年前のW夫人のvoila de la pervenche encore en fleurの「引用」だったわけですよね(そのイタリック体がなんとも感動的でした!この無意志的想起の表象は後のプルーストにダイレクトにつながります)。
 最後にレポートについてアナウンスしました。課題は「19世紀前半までのフランス文学からひとつの作品を選び、自由に論じなさい、ただし、必ず複数の文献を参照すること」というものです。分量は4000字程度(多少の増減はオーケー)。締切は2007年8月3日(金)17時、提出は文学研究科棟816今井研入口ポストまで。単なる感想文にならないように、10分間発表の案内文に書いたことを守ってトライしてください。授業はあと三回を残すのみとなりました。来週は、ボーマルシェシャトーブリアン、コンスタンについて、それぞれ発表していただきます。担当の方々、どうぞよろしく。