火2『理論の魔―文学と常識―』を読みながら文学研究について考える

 パリのノートルダム大聖堂が火事――というニュースにショックを受けつつ、淡々と第二回目の話をしました。今日は、前回読んだ内在的方法と外在的方法の諸相について、私自身の経験をもとに、話を展開してみました。「美しい」読書体験は基本として共有しながら、作品テクストをより説得的に価値づける作業がおそらく研究の大きな部分であろう、そのための比較的安定的な論のかたちというのはある程度存在するのではないか、という反動的なお話をさせていただきました。読書体験(間テクスト性)の遡行研究・テクスト比較検討研究、草稿研究(生成論的研究)、修辞学的=詩学的=言語学的(意味論的・統辞論的・音韻論的)テクスト分析的研究、クロノロジーに沿った同一作家内作品比較といった実際的なところから、ディシプリンの盛衰(19世紀ロマン主義的国民文学研究と仏文研究の盛衰)、作家評価は株価の変動のようなものといった見方など、あちこちと話は飛びましたが、これから修士論文を書こうとする方々にとってダイレクトに響くお話をこれからも意識してまいる所存です。緊張感を醸し出すために、自分の研究が文献目録的にはどこに位置するのか、そのことを意識するために先行研究の分類(何を基準に分類するかという点も課題です)と業績内容の端的な評価(その研究は結局何をやったのか、何を価値づけたのか?)をそのうち受講者の皆さんひとりひとりにやっていただく予定ですので気持ち的なご準備を願います。では、また来週。