中庸の倫理から希望的文献目録へ

 今日も前回の続きで、研究とは何なのだろう、という基本問題を意識しながら、外材批評と内在批評、コンテクスト重視の研究とテクスト重視の研究という、テクストを扱ううえでの両極端の視点が、ジャルティさんによれば、今や、そうした二項対立は積極的に乗り越えられていて、かつての硬直した文学史も文化史のほうへ自己改革して説得度を増す一方、攻撃的な文学理論も、詩学やテーマ批評や生成研究で多面的に説得度を増し、最近の若い博士論文執筆者たちはそのあたりのバランスをうまくとっているとのことでした。コンパニョンさんも安定したバランス感覚によって中庸の美徳を説き、ジャルティさんの文章も中庸の倫理を説いています。そして今日の本題ですが、前回少し言及した文献目録について、私自身の博士論文の事例を参考までに挙げさせていただき、個々の文献が私の研究にとってどのような意味を持ったか、いくらか回顧的に整理してお話をしているうちに時間となりました。受講者の皆さんにも是非、これから修士論文を準備するに当たって、どのような先行研究をどのように参考にしたいのか、希望的な文献目録の初歩的なかたち(まだ数は多くなくてかまいません)を例示してもらえたらと考え、休み明けにメモのようなものでよいので発表していただくことにしました。この授業はこんな感じで、コンパニョンさんの本を時々参照しながら、ダイレクトに研究や論文執筆につながる身振りの練習の場ともなっていけばよいと願っております。