翻訳のない最新の基本文献は宝の山!

 今日は、あくまでもフランス語原文の正確な解釈に努力するのが第一になすべきことであって、直接的な研究の対象とはならない翻訳との付き合いはほどほどに、というお話から始めました。続いて、原文が大事といっても、その原文テクストそのものが揺れ動く場合があることの具体的な例も挙げました。ヴァレリーの『レオナルド・ダ・ヴィンチ方法序説』という評論文を1957年のプレイヤード版で読むのか、それとも、今やネットで簡単に読める1895年の初出雑誌版で読むのかによって、解釈はまったく違ってくる可能性があるというお話をしました。原文テクストを扱うだけでも、謙虚さと慎重さが求められるということがわかっていただけたら幸いです。もう一点、研究には進展・進歩が確実に存在するので、扱うエディションは最新のものを、また研究文献もなるべく最新のものを参考にすべきであることを強調しました。たとえばヴァレリーの『ドガ ダンス デッサン』研究でいえば2017年秋~2018年冬のオルセー美術館での展覧会カタログは最高の研究文献です。翻訳のない最新の基本文献は修士論文を書く上で非常に有効な参照先であり、研究の核をなす知見、いわば宝の山となる可能性があります。そして最後に、前回、前々回からの宿題であった希望的書誌を発表していただき、あれこれとコメントさせていただきました。実践的な研究の身振りにすでに入りました。まだまだ改善の余地、やるべきことはたくさんありますが、まずはこの一歩を大事にしましょう。次回もプラスアルファの補足的展開を皆さんに語っていただこうと思います。では、また来週。