「書誌が最初で、序論が最後」が論文執筆の本当の順序

 休み明けの今日は、前回の補足として、書誌(参考文献・文献目録)の重要性についてお話しているうちに、それで終わってしまいました。ランソンの弟子筋にあたるであろうエミール・ブーヴィエとピエール・ジュールダの『フランス文学学生要覧』(初版1936年、増補第六版1968年、PUF)という本の14頁に「文学研究は探索領域の限定を必要とする。それが、あらかじめ比較された先行研究に基づいてなされることは言うまでもない。このことは《書誌》というシンドイが不可欠なタスクを前提とする。文学史にはまず謙虚さ、慎重さが要請されるだけでなく、批評的な用心深さも必要である。」というような記述がありました。それから東郷雄二先生の今や古典となった(2009年にちくま学芸文庫入りした)『文科系必修研究生活術』(2000年、夏目書房)の要点として、タイトルに示した研究の順番を強調しました。前振りが長くなってしまって恐縮です。来週は受講生の皆さんに当面の研究の「前提」となるおひとりおひとりの希望的参考文献について紹介していただきます。この授業では、コンパニョンさんの本『文学をめぐる理論と常識』に時々アトランダムに触れながら、そもそも問題意識・問題設定とは何なのか? 問題意識をどのように明確化すればよいのか? という研究の前提をなす根本的な問題について、皆さんと一緒に実践的・技術的に、そして時折、心構え的なことに触れつつ(道徳論的に? 反動的に?)考えてまいります。では、また来週。