今日は、予定を変更し、番外編というか補足編として、先日、パリに短期滞在した折に集めてきました、アンリ・ルアール関係の資料の一部をご紹介しました。まず、ルアールの没年1912年に刊行された、アルセーヌ・アレクサンドルという人物による著書『アンリ・ルアールのコレクション』から、同コレクションおよびルアールという人物を紹介したテクストの一部を読みました。故人への尊敬と愛情に満ちた文章で、味わいがあります。散逸直前のコレクションについての貴重な網羅的カタログでもあるこの書物は、アンリ・ルアールに関する資料として貴重なものといえるでしょう。次に、アンリ・ルアール生誕百年記念の1933年の回顧展カタログのヴァレリーによる序文と、その序文のタイプ原稿を紹介し、両者を照合確認(ほとんど等しいものと考えて間違いないです)したのち、この1933年のテクストのかなりの部分が、3年後の1936年にドガの挿絵入り豪華版として刊行される、ヴァレリーの名著『ドガ・ダンス・デッサン』の文章のなかに、しっかりと取り込まれている様子を観察しました。こうした、基本的な文献調査や、手稿やタイプ原稿と刊行テクストとの照合作業や、他の著作との比較観察作業といった身振りは、とても地味で時間のかかるものですが、さまざまな判断の前提となるような基本情報を与えてくれるという点では、とても豊かな意義を持った作業でもあると思います。来週は、少し補足をしてから、『コローをめぐって』を読みます。なお、レポート課題の詳細については、来週、お知らせします。