今日は、地図を眺めながら、ジャック・レダの『パリの廃墟』の一部を読んでみました。大きな物語も劇的な筋もありませんが、パリを歩いて思い描くあれやこれやの夢想と意見が、絶妙なユーモアとともに、淡々と記されていきます。パッシーから眺めおろすビルアケム橋のパースペクティヴや、逆に、ビルアケム橋から見上げるパッシーの眺望、そして、パッシー駅の西下方に広がる段差地帯(九龍城!)の風情。実際にストリートヴューで見ると、だいたいの感じがつかめると思います。一見したところ、強烈な主張のないように見えるレダのテクストですが、たとえば、ビルアケム駅を「保養地」として数時間過ごそうとする視点には、かなりパンチの効いた現代生活批判があります。地図で通りの名前を追いかけるのに少々骨が折れますが、じっくり味わって読みたい、現代パリ文学の佳品です。