今日は、断章3の終わり(p.31)まで、ひと通り読み終えました。諸芸術を考える上での基本的な「単位」あるいは「共通の尺度」としての「装飾」ornementについて語った部分です。ヴァレリーは13歳の頃から、オーウェン・ジョーンズの『装飾の文法』なる書物に親しんでいました。今日読んだところでは、たとえば、p.28で、古今東西の様々な装飾模様が列挙されるあたりに、一種の詩的高揚が感じられます。「効果が装飾の目的であり、芸術作品とは公衆に印象を与え、感情を湧出させ、もろもろのイメージを互いに応えさせる機械装置の性質を帯びる」とヴァレリーはいいます。芸術家は効果を産出するオブジェを作るために「抽象」を行い、享受者はオブジェの発する効果を「帰納」によって回収していきます。この実にシンプルな原理がヴァレリーの芸術論の基本です。さて、原理的な一般論は、今日で一段落とし、次回からは、具体的な画家についての文章、当面は主にイタリア絵画をめぐる文章をみていきたいと思います。テキストの続きをコピーしました。研究室の机の上に置いておきます。