今日は、パトリック・モディアノの『暗いブティック通り』の第24章と第25章を読みました。通りの名前がたくさん出てきますが、それらは、単なる場所を指示するものというよりは、小説の世界の登場人物として、濃密な存在感を主張しています。そう、主張している、という感じです。私たちは、主人公と共に街路を歩きますが、その街路そのものが濃い存在なのです。地図を片手に読むことが半ば必須となるのは、そのような街路たちの自己主張の強さゆえでしょうか。さて、モディアノの小説の主題は金太郎飴的で、ほとんど、どれも似たり寄ったりの印象を与えますが、それは、モディアノ・ワールドと言ってよいものだろうと思います。喪失の主題の哀切に加えて、その文章の簡潔と感覚的表現のカッコよさというのが、なんと言ってもモディアノの魅力です。フランス語が読める方々は、この際、是非、彼の文章の味わいを、原文に当たって、享受していただきたいと思います。では、また来週。