今日は、p.293の下から7行目まで、読みました。文学という芸術は、言語という共通素材を用いながら、その厳密性の欠如に由来する可能性を最大限に利用する、とヴァレリーは言います。みずからの「カイエ」の作業が自分にとって根本的な重要性を持つことを指摘したヴァレリーは、一般に、何かの問題を考えるときに、まずは混乱に満ちた「言語的状況」の再検討、「心的領域の清掃」を行うことが大事だ、と言います。p.293では、美学者の陥りがちな誤りとして、作品を明確に限定された実体とみなしてしまうことが指摘され、すぐさま作品から作者へとダイレクトに考察をすすめるあり方が批判されます。「作品は、はっきり限定された観察者のなかで、あるいは、その観察者によってのみ考察されうるのであり、作品それ自体としてはけっして考察されえない」という表現は、そのあとで展開される効果理論の予告です。さて、この授業は来週で終りとなります。今読んでいるテクストは全部は読み切れませんが、とりあえずp.299の空白前までは、読み終えたいと思います。予習をよろしく。