今日は、p.70の真ん中、un seuil.で終わるところまで、読みました。実用的な事柄とは正反対に、保存・再生を誘う美的な事柄があり、その感覚の例としてヴァレリーは空腹と美味の経験を対比して挙げています。美味感覚は、ただ飢えを満たす空腹感の廃棄とは逆に、保存・再生を促します。芸術作品は、この美味感覚を延長した美的事柄に属し、満足が欲求を、反応が刺激を、不在が存在を、所有が欲望を再生させる、といいます。感覚とその感覚への期待というサイクルは無限なので、ヴァレリーは、実用的事柄と対置して「美的無限」という言葉を使っています。知覚におけるこのサイクルの例として挙げられるのが「補色」現象です。補色のプロセス自体は無限で、それを止めるのは外的な条件、たとえば疲労であり、仮にエネルギー源が供給され続けるならば、補色プロセスは永久に続くだろうというのがヴァレリーの議論です。補色がはたして美的無限の例として効果的かどうかは少しわかりにくい点もありますが、彼自身、一時間も実験したというのですから、どうやら、補色プロセスはヴァレリーのお気に入りの参照経験らしく、このテクスト以外にもしばしば言及されるようです。講演そのものはあと8頁分ですから、三回あれば読み終えられるでしょう。では、また来週。