今日は、ラシーヌの『フェードル』とモリエールの『人間嫌い』から、それぞれ、有名なシーンを紹介しました。悲劇『フェードル』では、ヴェニュスの呪いのために道ならぬ恋の獣と化す王妃フェードルの二つの告白のシーン(ひとつは乳母エノーヌに、もうひとつは恋の相手である義理の息子のイポリットに対するもの)を読んでみました。たとえばニコラ・プッサンの絵などに描かれた優雅なヴェニュス像とは違って、こちらの女神は激烈な呪いの猛獣という恐ろしい表象です。一方、「高級喜劇」の『人間嫌い』からは、アルセストが気取り屋のオロントの詩を酷評する「ソネットの場」を紹介しました。アルセストの率直な美学はどうやらこのプレシオジテ(気取り)の時代には通用しなくなっていたようです。笑いの対象は、硬骨漢アルセストにも、また、プレシオジテにも、両方に向かって可能なように開かれているようです。
 今日は、7月21日に行う筆記試験のアナウンスをしました。中世から19世紀前半まで(この授業で扱った時代)のフランス文学のなかから作品をひとつ選んで、自分の面白いと感じたテーマを設定して、それについて論じる(答案用紙二枚程度=2500字程度)、というものです。資料の持ち込みは不可です。今から、しっかりと準備を進めてくださいますように(ちゃんと作品を読んで準備をしていないと書けませんよ)。次回から18世紀のフランス文学を概観します。では、また来週。