今日は、「芸術についての考察」のp.67真ん中部分elle est inutile.というところまで、読みました。芸術作品とは何かという問いに入る前に、人間による作品と自然の作品の違いが考察されています。人間はフォルムを作るために、マチエールの一部だけを考慮するということ(花瓶の例)、出来上がった作品の外部構造はマチエールの内部構造と比べて複雑ではないということ(隊列の例)が述べられ、秩序(人間の作品のフォルム)は素材の秩序外しを命令するとしています。これは、ここでは使われていない言葉ですが、抽象(裏側から言えば捨象)ということでしょう。ヴァレリーはまずこの予備考察をしたうえで、芸術作品とは何か、分析を進めます。三つの特徴が挙げられます。その第一は、芸術の効果が、特殊個別的で非恒常的なものであり、万人の一般的・恒常的な生理的欲求にこたえるものではないということです。前者の意味では多少なりとも役立つものであり、後者の意味では役立たずのものとなります。このあたりのヴァレリーの議論は慎重です。今日は、ここで時間となりました。抽象的な議論を読むときはゆっくり進みます。次回は残りの二つの特徴を読んでいきましょう。では、また来週。