今日は、16世紀のデュベレーとロンサールの詩をそれぞれ二つずつ紹介しました。詩を読む前に、最近三元社から翻訳が刊行されたフランスの社会言語学者ルイ=ジャン・カルヴェの『言語戦争』(今井も翻訳に少し参加しています)のなかにデュベレーの「フランス語の擁護と顕揚」について論じている部分があったので、それを紹介しました。テクストを取り巻く当時の歴史的・政治的な状況を知っておくと、デュベレーの「幸いなるかな、ユリシーズは……」のソネットに歌われる、イタリアよりも故郷フランスのほうが好きだと連呼する部分は、望郷というテーマに加えて、フランス語顕揚運動のナショナリスティックな流れに乗る部分もあるなあという気がしてきます(政治的読解をすると哀切な抒情詩もずいぶんと印象が違ってきます)。あとはロンサールの定番の恋愛詩を二つ。春のパッションと秋の情念。カッサンドルとエレーヌに捧げる恋唄でした。デュベレーの「幸いなるかな……」とロンサールの「エレーヌのためのソネット」はジャン・ヴィラールの低音の魅力いっぱいの朗読を聞きました。いいですね。皆さんもお気に入りのソネットなどありましたら、是非、たくさん朗読して、覚えてみてください。次回は、モンテーニュの『エセー』を紹介します。では、また来週。