今日は、まず16世紀フランス文学の背景についてお話したのち、フランス・ルネッサンスのユマニスム(人間理性にもとづく人文主義)の理想を語るテクストとして、ラブレーからいくつかのテクストを紹介しました。最初に第二の書『パンタグリュエル』から第8章の、パリで勉強する息子パンタグリュエルに宛てた父ガルガンチュワの手紙(学問のススメ)を読み、古典語とりわけ「ギリシャ語」をしっかり勉強せよというメッセージが繰り返されていることに注目しました。『新約聖書』はギリシャ語で書かれており、『新約聖書』を基礎とする福音主義が新教の柱となります。ギリシャ語第一主義はラテン語中心の旧教的中世文化との距離を意味するでしょう。次に第一の書『ガルガンチュワ』第57章の「テレームの僧院」の規則「欲するところをなせ」をめぐる箇所を読み、「自由意志」と同じ意味の場をかたちづくっている単語群を結び合わせ、ユマニスムの理想主義の表現を確認しました。最後に、また第二の書『パンタグリュエル』に戻って、第22章の「尿の川」の話を読み、豪放磊落なユーモアに少しだけ触れてみました。宮下志朗先生の『ラブレー周遊記』(東大出版会、1997年)に面白い解説があります。興味のある方は是非、ご参考下さい。では、また。次回5月12日にお目にかかりましょう。