今日は、最終回。『ドガ・ダンス・デッサン』から「ダンスについて」の最後のページ(p.1173)を、ゆっくりと読みました。ヴァレリーは、人間の女性のダンサーよりも遥かに凄いダンサーを映画で見たことがあるといって、クラゲのダンスを紹介しています。その具体的な動きの描写が実にリアルです。文章によるこうしたイメージ豊かな描写は、詩人ヴァレリーの得意とするところです。ラストの部分では、どんな人間の女性のダンサーも、この巨大クラゲほどに、官能的な動きを表現したことはなかった、として、最大限の賛辞をささげています。クラゲが熱気球のように、水面のほうへ上昇していく様子を暗示して、この文章は閉じられていますが、読者を面白がらせる、実に凝ったテクストです。さて、これで、この授業も終わりとなります。実践的なフランス語能力を養うには、簡単なニュース記事の文章などを大量に読み、大量に聴くというのが効果的ですが、こまやかな読解力を養うには、やはり、骨のある名文を、一字一句ゆるがせにせず、丁寧に読み込んでいく「精読」の訓練が不可欠です。この授業が、そうした精読の訓練の場として、皆さんのお役に立つことができたならば幸いです。春休みも、自主的に、好きな作品を原文で読んでくださることを願っています。それでは、またお会いしましょう。