今日は、最終回。ヴァレリーの若い時の文章「建築家についての逆説」をざっと読みました。このテクストの冒頭部と結末部に現れるオルフェウスは、音楽家にして建築家でもあるアンフィオンの神話と重なって、音楽と建築の深いアナロジーを象徴する人物となっています。「バジリカ聖堂は石の奏でる聖歌である」(p.1403)という表現や、「ランスの豪華なファサードタンホイザーの一節の間にある、いわく言い難い照応」(p.1404)という表現などは、まさに、『ユーパリノスまたは建築家』に出てきた「歌う建物」の別ヴァージョンといえるでしょう。やがて出現するはずの偉大な建築家の建造になるであろう教会のなかで音楽が鳴り響く様子を想像している部分(pp.1404-1405)はなかなか熱のこもった文章になっています。これは、『ユーパリノス』のラストでソクラテスが、自分がなったかもしれない建築家を想像する部分と、どこか、似たところがあるように思います。さて、これで、この授業も終わりとなりました。授業は、言ってみれば、ビタミン剤というか、サプリメントのようなものを、公共的に摂取する場です。ここで読解力が鍛えられることはもちろんなのですが、最終的な「食事」、というか、本格的な勉強は、皆さん自身の知的好奇心によって自由に推し進められる、個人的な読書であり勉強です。大学の授業がない2月や3月は、まとまった読書や勉強ができる大切なチャンスです。どうぞ、大いに頑張っていただきたいと思います。それでは、また、新年度の始まる4月にお会いしましょう。