今日は、1939年のエッセー「似ていることと芸術と」の残りを全部(p.227左側二つ目の段落からp.229左側の最終段落まで)読みました。肖像画の問題から一般的な模倣芸術の問題、デッサンの問題へと話が進み、デッサンの重要点が述べられます。p.228左側では、芸術は存在しないものに対する戦いである、とされ、幸福な偶然から生まれたばかりのものを、いかに、虚無への消滅から救い出し、存在のうちに支え、形を与えるか、という芸術の課題が語られます。p.228右側下では、不定形なもの、曖昧なものに形を与えることが、昔から、巨匠たちの練習課題だったとされ、レオナルド・ダ・ヴィンチのデッサン「腰掛けた人物像の衣襞」が紹介されています。ラストは、またしてもヴァレリー得意の古典的美学からする現代批判で話が結ばれていました。結局、授業三回分をこのエッセーの読解に当てることになりましたが、晩年のヴァレリーの文章芸の冴えと共に、その古典主義的美学の根強さ、その裏返しとしての現代批判の激しさというものが、よく感じ取れたものと思います。さて、次回は、1938年の短いエッセー「モンペリエ美術館」を読みます。そのあと、ルアール家との交渉についてのお話に移る予定です。では、また来週。