今日は、ユーパリノスによる身体への祈りの部分を読み終えました。p.99の下のほうで、身体が宇宙に匹敵するものとされ、そこから、球体としての宇宙(世界)、その中心にある身体、そして、世界の外面しか見ない魂(精神)という三つの要素が出てきます。これは、おそらく、ヴァレリーの思考に回帰的に現れるCEM、つまりCorps身体、Esprit精神、Monde世界の図式(CNRS版カイエ22巻の147頁に「CEM―認識の三枢要点」という記述があります)と関係があるように思われます。ユーパリノスは、「驚異的な実体」としてのCorpsの持つ普遍的諸関係について人間はあまりに無知であるが、自分の求める作品は、身体と精神の合一からうまれなくてはならない、そして、身体と精神は、自分の芸術を通じて互いに調和し理解しあわなくてはならない、といいます。芸術制作の根本に身体を置く考え方は、ヴァレリー自身の芸術論の基本にも、確かにあると思います。水曜日の授業で以前読んだ『レオナルド・ダ・ヴィンチ方法序説』でも、「網膜」が「概念」よりも優先的な価値を担うものとして重要視されていましたし、ヴァレリーの詩は、言葉の概念よりもまず、言葉の身体的感覚的官能性を前提としているように思われます。さて、ユーパリノスの言葉を紹介するパイドロスの長い台詞が終わりましたが、実は、まだ、ユーパリノスは「歌う建物」とはどんなものか、具体的な説明をしていません。本題に入るには、前提として話しておかねばならないことがいろいろとあるようです。では、また来週。