今日は、p.86の下から2行目indefinissablesまで読みました。「実行に細部なし」という掟を、それでは、ユーパリノス自身はどのように実行していたのか、という部分です。パイドロスの長いセリフは前半と後半にはっきり分かれます。前半では、実際の建築現場、つまり、作る過程での、こまやかな気遣い(かませ板の工夫など)が述べられ、後半では、将来、建築が完成して、それを見る人、その空間のなかを動く人に向けた「効果」の計算と演出が述べられます(ヴァレリーの得意とする「効果の詩学」が美しく描かれているところです)。後者のテクストでは「幸福感のようなものへと導かれる」様が微妙な言葉遣いで描かれています。知的な単語を使いながら官能的な印象を作り出しているこの箇所は、後で出てくる「歌う建物」の伏線になっているかもしれません。時々、省略的な表現があったりして、難しいと感じるところもありますが、基本的には、とても明るいトーンのテクストです。ヴァレリーもまた、ユーパリノスと同様に、わたしたち読者への「効果」を十分に計算して、この幸福感のようなものを与えてくれるテクストを書いているのでしょうか。この先も楽しみです。では、また来週。