今日は、コレットの『シェリ』を読みました。レアとシェリの心が次第に離れていく様が哀切に、時に、とどめをさすように残酷に描かれていました。薔薇色を基調とした豊かな色彩表現や強烈な比ゆが印象的でした。地図を見ていて面白かったのは、ビュジョー通りのレアの家と、ヌイイのアンケルマン大通りのマダム・プルーの家と、シェリが新妻との新居をととのえているアンリマルタン大通りの家、この三つは(もちろん推定ですが)ほとんど同じ経度(つまり南北線上)に位置しているように思われるということでした。コレットはひょっとして、地図を見ながら、登場人物たちの家を決めていったのかもしれません。16区とヌイイは今も高級住宅街ですが、1920年以前は、その趣がもっと強かったのでしょうね。冒頭の薔薇色の光に満たされた室内描写も感覚的/官能的でしたが、シェリがブーローニュの森沿いの並木道を西風を受けながらレアの屋敷のほうへ向かって歩いていくときの室外描写も劣らず感覚的/官能的でした。『シェリ』がパリ文学の芳醇な一篇であることは間違いありません。