今日は、夜ふけのパリのグラン・ブールヴァールを舞台にした恋する男の狂詩曲ともいうべきテクストを読みました。プルーストの『失われた時を求めて』から「スワンの恋」の一部です。鈴木道彦訳を参照しつつ、吉川一義先生による仏語日本語対照版(『プルーストスワンの恋」を読む』白水社、2004年)も参照させていただき、テクストの面白さがたとえばどういうところにあるかといった点について説明させていただきました。今日読んだところでは、「あたかも〜が〜するように」comme si〜という喩えの部分が二箇所でてきましたが、いずれも、面白い比喩でした。とりわけ、スワンが、黄泉の国でエウリュディケを探し回るオルフェウスに自分をたとえるところには哀切さと滑稽さが混じり合っていましたね。最後に、工藤庸子先生による解説(『プルーストからコレットへ』第1章「二人のココット」からオデットの曖昧性を論じた部分)を読んで、スワンを背後で手玉にとっているオデットというココットの玉虫色の存在、その変身物語の面白さという側面に少しだけ触れました。プルーストの『失われた時を求めて』全巻読破はたいへんですが、とりあえず抄訳版(集英社文庫全3巻)を読んでみるという手もあるかもしれません。では、また来週。