今日は、先週に引き続き、ヴァレリーの伝記的な事実について、補足説明をしました。年表を見ていると、やはり、二度の世界大戦が起こった激動の時代を生きているということがよくわかりますし、1917年以降、1920年代の栄光の道を歩むヴァレリーの姿がフランス国家の文化的威信を誇示する戦いとして見えてくるようにも感じられます。それから、クラシック・ラルース版『魅惑』の編者であるモネスティエによる紹介文をざっと読んで(「非人称的抒情詩人」とか「あらゆる矛盾の幾何学的場」とか、オクシモロン=矛盾語法による規定が繰り返されるところが印象的でした)、いよいよ、本文に突入です。今日は、最初のページだけ、ゆっくり読んでみました。舞台は冥界。パイドロスソクラテスの対話の始まりです。単純過去の荘重な表現のあと、それを解説するように複合過去で普通に語るところとか、よく見ると、なかなか凝った仕掛けがあるように思われます。さて、来週は、アントワーヌ・コンパニョン先生の講演準備のため、休講とさせていただきますので、次回は、連休明けの5月12日となります。少し時間がある間に、できれば、翻訳(岩波文庫)で、対話の全体に目を通しておいてくだされば幸いです。それでは、また。