今日は第29番「気前のいい賭博者」に入り、56行目まで読みました。冒頭第一段落、地下の屋敷に下りていくところは、何かしら地獄に堕ちていくような危なさがある一方で、阿片窟のような怪しい雰囲気が漂うその至福の世界の描写は、「旅への誘い」に出てくる「豪奢、静けさ、逸楽」の感じが満ち溢れています。lotusを食う人への言及は、『悪の華』のラストの詩「旅」の終わりのほうにも出てきます。そこに見える男や女の顔は、いつかどこかで見たことがあるような、懐かしさがある、という既視感は、何かしらリアルです。ボードレール・ワールドを十分に堪能できる甘美な35行分を終えると、相方(悪魔)との賭けの話になります。36行目から57行目のあたり、魂ameを賭けて負けて、それを失うくだり、一人称複数形の単純過去形mangeames/fumames/causames(いずれも実際はアクサンシルコンフレックスがaの上に付きます)が反復的に出てきますが、これらがすべて、音的にも意味的にもameと戯れていることは明白です。日本語訳ではわからない原文の味わい、原文を読める皆さんには、そのあたりの喜びを大いに感じていただきたいと思います。来週は、残りを読みます。