開講しました

 今期もよろしくお願いします。前期にひきつづき、物語性の強い、長めのものを読んでいこうと思いますが、後期オープニングの今日は、ボードレール的な(?)雰囲気に浸り、なんとなくスプリーンな(?)気分を味わう意味も込めて、第10番「午前一時に」を、皆さんと一緒に読んでみました。都会で生きる詩人の夜想です。「人間の顔の暴虐」が消えて、ひとりきり、「暗闇の沐浴」に疲れを癒す頃、今日のぱっとしない一日のあれやこれやを思い出す詩人の姿には「私たちnous」の姿もまた映っているように感じます。「犯したことのない悪事を自慢し、ほら吹きの罪や世間体を気にした嘘などは卑怯にも否定した」などといったことは、普通の「私たち」にだって、ありうることではないでしょうか。ラストのところ、自分は最低の人間ではないことを証明するような美しい詩句を生み出す「恩寵」を神様に願う姿は、「ポイエイン」をする人=詩人の、哀切な実存的祈りの姿に他ならず、ちょっとジーンと来ます(この点において、この詩もまたメタポエム=詩の詩、ということになりますね)。夏休みボケが私にもありますが、これで少しだけ、ボードレールワールドの入り口に立てたような気がします。さて、来週は、第12番「群衆」を読んでから、少し長めの第13番「寡婦たち」の読みに入る予定です。ゆったりと味わいながら読んでいきましょう。丁寧な予習を、どうぞよろしく。