みやぎ県民大学:地中海賛歌―ヴァレリーの詩「海辺の墓地」を読む―

 今日9月6日(土曜日)午後2時から4時まで、一般市民の皆さんを相手に講義をしました。今、大学院で読んでいるヴァレリーの『魅惑』所収の詩のなかでも多分一番有名な「海辺の墓地」について、限られた時間でその面白さを伝えるべく、ほぼ一週間(主に資料の)準備をして本番に臨み、何とか無事終えることができました。それにしても、あっという間の二時間でした。蒸し暑くて汗をかきましたが、扱う対象は地中海の乾燥した空気、まばゆい太陽、青い海、そして、ひんやりとした墓地、最後は再び波しぶきの生命的イメージ、という、実に涼やかな内容でしたので、一応、外界と講義内容のバランスはよかったかも……。私なりに絞りに絞って言いたかったところはだいたい伝えられたと思うのですが、ヴァレリーの濃密な詩のパワーには、やはり圧倒されます。しかし、市民向けのこのような講義は、ふだんの学生さん相手の講義以上に、より基本的な観点からわかりやすく話を組み立てる必要があるので、私自身にとって問題意識を明確化するチャンスとなり、いい勉強になります。改めて読む「海辺の墓地」は、テーマ的にはわりと親しみやすく、同時に、ヴァレリーならではの部分も結構織り込まれていて、通俗と高雅の調和した、いい詩であるなあ、と、素直にそう感じます。夏休みはいつも長丁場の仕事になんとかケリをつけようとして、あれこれ頑張って疲れてしまうところがあるのですが、今回の授業は、そんな「ケ」の続く暗い夏休みのなかの一服の「ハレ」間。とても気持ちのよい気分転換になりましたし、2008年の夏休みのいい思い出になりました。残りはまたひたすら「ケ」です。皆様、どうか、残りの夏休み、元気にお過ごしください。