発表(3)

 都市をめぐる文学について、今日は発表の三回目。まず、M君が、都市が生み出す「怪異」、という題で、『日本霊異記』『今昔物語集』『雨月物語』から怪談をいくつか引いて、怪異譚の発生の背景を探ってくれました。都市(とりわけ平安京)における怪異発生装置としての「橋」と「辻」の象徴性など、博識に満ちた発表で、M君の薀蓄の深さに感服しました。続いて、Kさんが、『グレートギャツビー』と1920年代のアメリカ、という題で、成り上がり的ウェストエッグと上流階級的イーストエッグの対比(下層地帯「灰の谷」が両者に挟まれている)などに目配りしながら人物模様を解説し、また、小説のアンハッピーエンドのうちに、フィッツジェラルドによる社会批判を読み込む、という、これもまた充実した発表をしてくれました。ニューヨークの空間区分は、文学における都市空間の表象として、Sさんが紹介してくれた『舞姫』のベルリンとか、授業で扱った『感情教育』のパリとか、とつながる話だったと思います。
 これで、受講生の皆さんによる発表は無事終了しました。いずれも、素晴らしい発表でした。さて、ついこのあいだ始まったばかりのようにも感じるこの授業も、次回が最終回となります。今までのまとめを少ししたうえで、最後は、やはり、私なりの「パリ文学散歩」に戻って、お話をしたいと思います。